モータースポーツのプロ用カメラ、なぜ「キヤノン」の独壇場なのか? 各社比較を通して考える
ミラーレスカメラの需要が好調だ。2月のカメラ映像機器工業会の発表によれば、2022年デジタルカメラの世界出荷額は前年比39%増の6812億円。2年連続で前年を上回った。
他社との差はどこから生まれのか

2023年2月、日本レース写真家協会の報道写真展がキヤノンギャラリー銀座(東京都中央区)で開催され、計48人のカメラマンの作品が展示された。
ここでの機材使用率を計算すると、キヤノンは全体で33人が使用と69%に上る。そして、この分野でも今や全体の4割を占めるミラーレス一眼に関していえば、同社が20人中17人と
「85%」
にも達する。キヤノンのギャラリーで開催されたことを差し引いても「大差」である。
このようにモータースポーツのプロ用カメラに関していえば、メーカーシェアはキヤノンが圧倒的である。この差はどこから生まれ、そして今後、急速に変化するのだろうか。
ソニーのミラーレス一眼が業界に衝撃を与えたのは、2017年春に発売された「α9」といえよう。世界初のハイスピード画像センサーの搭載により毎秒20コマの高速連写と、それを支えるα7の約2倍のバッテリーを使用しつつ、従来のプロ用デジタル一眼レフカメラの約半分、700gを切るボディー(バッテリー込み)を実現した。
何より高速連写では、ブラックアウトフリーが最大の話題となった。従来のスポーツプロカメラマンが最も嫌った、シャッターを切った瞬間にコンマ数秒、見えなくなるミラーレス一眼特有のブラックアウト現象が解消されたのである。
厳密にいえば通常のミラー付きの一眼レフでもミラーが跳ね上がった瞬間は画像が見えていないわけだが、それはシャッタースピード同様にほんの一瞬であり、従来のミラーレス一眼がコンマ数秒ほど「ブラックアウト」している感覚とは雲泥の差であった。
そこをα9は、速いセンサー速度を生かし、なおかつ秒あたり20コマの高速連写モードでは「電子シャッターのみ」という形でブラックアウトを解決したのである。