ロシア人はなぜ「計画性」がないのか? ロシアトヨタ元社長が直面した旧社会主義国家の現実と、それを支えた奥田碩のリーダーシップ

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ロシアトヨタの社長を2004年から2009年まで務めた人物の苦闘の記録。ロシアとは、いったいどのような国家なのか。

一筋縄ではないロシアビジネス

モスクワの街並み(画像:写真AC)
モスクワの街並み(画像:写真AC)

 当初は車の通関はモスクワでしかできず、フィンランドからモスクワまで片道1300kmを大型トレーラーを使って輸送し、しばしばルールが変わってしまうモスクワの税関に対処するという仕事に明け暮れたという。

 同時に、工場建設のためにロシア政府とコンタクトを取り、サンクトペテルブルクでの工場建設への道筋をつけた。ただし、本書を読むとロシアにおけるビジネスが一筋縄ではいかなかったこともわかる。

 例えば、ディーラーの選定についても慎重に行う必要があった。これは2000年代はじめのロシアでは、出資者同士の仲間割れが原因でマフィア絡みの恐喝や銃撃事件になることも珍しくなく、そういった危険な人物を避けることが必須だったからだ。

 そのため、選定は法務部を交えて慎重に行われ、治安機関や情報機関のOBがいる調査会社を使った調査も行われた。

 また、公的機関にも大きな問題があった。著者は内務省や税務署から嫌がらせともいえるような調査や証人喚問を受けているが、これは調査や追徴課税を取り下げる代わりに非公式な解決金の支払いを要求するものだった。

 著者らはトヨタがこうした取引に応じない企業であることを示すことが重要だと考え、書類などをきちんと用意して反論するとともに、本社などを巻き込んでさまざまなルートにはたらきかけ、大事に至らずにすませたが、これらはロシアでビジネスをする上でのリスクを感じさせる出来事だった。

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