空飛ぶクルマの墜落を防ぐ! 知られざる「風の可視化」技術をご存じか

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2025年に大阪万博で本格的に実用化予定の空飛ぶクルマ。導入が進めば、私たちの暮らしは飛躍的に便利になるだろうと想像する一方で、落下のリスクをどうしても考えてしまう。

進む風況予測のためのデータ収集

AI技術適用の概念図(画像:三菱電機)
AI技術適用の概念図(画像:三菱電機)

 このソリューションは、風の流れを測定するだけではなく、予測もできる。同じ場所で一定期間取得した風況データを蓄積し、三菱電機のAI「Maisart」を使って機械学習をさせる。これによって、風向や風の強さを、時間や場所、高度ごとに予測することが可能となる。

 現在は、その前段階として、さまざまなシーンでの風況データの収集が進んでいるところだ。

●離着陸場周辺とその上空の風況把握
 御殿場プレミアム・アウトレット(静岡県)のヘリコプタークルージングに使用される離着陸場で行われた風況調査では、離着陸場上空では、天候の変化に伴い強風が発生する様子が可視化された。調査日は朝から雨で、風は穏やかだったが、上空では夕方になって晴れ間が見え始めると強風が発生した。また、離着陸場周辺では、エリア内で風況が徐々に推移していく様子や、同時刻でも場所によって風況が異なる様子が観察できた。

●高層ビル群での風況把握
 都市部は気候変動の影響もあって風の影響が予想しにくくなっているが、このような場所にこそ空飛ぶクルマのニーズがあるともいえる。三菱電気は、三菱地所株式会社(東京都)とともに、東京都千代田区の超高層ビル「常盤橋タワー」上空と周辺エリアの風況を測定し、可視化した。一般的には、高度が上がると風速も上がるとされる。しかし、測定結果によると、水平方向の風速は必ずしも高度には一致しないことが明らかになった。

 このほか、内閣府の調査事業や大阪府の補助金事業に採択された各種プロジェクトも進行中だ。大阪ベイエリア航路の実現性や、ビル屋上を離着陸場に活用する可能性を探るために、大阪市内中心部のビル群や大阪湾などの風況調査が進められている。

 ドップラーライダーの技術や風況予測のモデル構築はすでに高い精度まで実現できている。三菱電機は次なるフェーズに向けて、データ解析・AI予測の検証を行い、わかりやすいユーザーインターフェースや使いやすい提供形態を模索しながら、柔軟な開発に努めていくとしている。

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