鉄道業界はなぜ「人手不足」「人あまり」が同時発生するのか? その構造から考える

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鉄道事業者は「人手不足」で求人がよく行われているが、一方では、人余り」も起きているようだ。なぜそのような事態が起きるのか、解説する。

本数削減ダイヤ、先の見通せない鉄道事業

駅の自動改札(画像:写真AC)
駅の自動改札(画像:写真AC)

 コロナ禍以降、都市部を中心にダイヤ改正ごとに減便が相次いでいる。それゆえに、以前よりも運転士の必要人数は減る傾向にある。都市部でのワンマン運転の導入や、自動運転の実験など、人手不足を解消しようという試みも鉄道業界の中では行われている。

 また、駅の窓口を減らしたり、自動化を進めたりもしている。結果として、職場によっては、人が余る傾向も出てきている。

 鉄道業界は、基本的に分業が進んでいる業界であり、職種間の転換というのが容易ではない。管理部門と現場、現場の中でも運転の職場とメンテナンス関連といったように、部署間で仕事が大きく違う。

 現場は人が足りなくても、総合職は人が多すぎるということがあり得るし、現場の中でも人手が余る場所と足りない場所が出てくる可能性がある。

 その中で自動運転や駅の省人化といった取り組みを進めても、そういった計画を立案するのは上層部の人なので、駅の窓口が減って不便になったといった声を直接受けることはなく、事業者内でも不満の原因となる。それが離職につながり、さらに現場の人手が不足する。

 現在は人が足りず、大慌てで採用を増やしているものの、同時に余っている人を減らすにはどうしたらいいかと考えているのが、鉄道事業者である。一方、減便を拙速に進めると、今度は現場も人余りになりかねない。

 鉄道は必要な列車本数を動かすには容易に人が足りなくなり、逆に本数が減ると人が余ってしまいやすいという乗り物である。そのあたりをタイトにしないと経営が成り立たないのだ。

 その点から考えると、「のぞみ」を需要により自由自在に本数を増減させることができているJR東海は、ある程度は人手に余裕があるといえる。この会社は新卒採用がメインの会社である。給料も高い。

 先の見通せない鉄道事業の中で、「人」をどうするかを考え続けなければいけないのが、実情である。

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