日本より厳しいコロナ「ロックダウン」でも ロンドン交通局が“バス大量廃線”を免れたワケ

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コロナ禍で都市交通が苦境に陥ったのは、日本もイギリスも同じだ。ロンドン交通局の危機を振り返る。

パンデミックから脱却しつつあるロンドン

ロンドンバスと地下鉄入り口(画像:写真AC)
ロンドンバスと地下鉄入り口(画像:写真AC)

 バスだけでなく、地下鉄の方も、苦境を脱しつつあるようだ。

 ロンドンの地下鉄は、週末にオールナイトで走ることが、よく知られている。パンデミックの期間は一時停止していたが、2022年にこの「ナイトチューブ」が完全復活した。当然、レストラン、バー、クラブといった夜の街のビジネスに与える影響は小さくない。

 パンデミック前、ロンドンの労働力の3分の1にあたる160 万人が夜勤をしていたという。ロンドンの公共交通機関の復活・正常化は、彼らの活動を含め、イギリス経済に大きな影響を与える。ロンドン交通局のプレスリリースには「パンデミックから脱却」という文字も見え、以前の悲壮感はない。

 ただ、政府からの資金援助を受け続けるのは決して簡単ではなく、経営への口出しも厳しい。2022年は、地下鉄でもバスでも繰り返しストが発生した。政府はスト封じの意味合いからも、ロンドン交通局に人件費削減となる地下鉄の無人運転導入を強く求めている。

 ロンドン交通局のコミッショナーは「短期や中期では(無人運転導入の)見込みはない」「個人的にはばかげた話。資金提供の契約にあるので、調査はする」と発言している(2022年10月11日付、『Evening Standard』)が、今後どうなるかは分からない。

 ロンドン交通局が、今後も政府の支援を求めていく姿勢に切り替えたのは、大きな変化と言える。他の主要都市の交通機関では、これまでも政府のサポートを受け入れていたが、ロンドン交通局は、少なくともここ数年は独立採算を保っていた。今回、コロナ禍の苦境から脱するために、支援を受け入れたことで、運賃設定やバスの本数、人員の削減に、これからも政府が干渉することが想定される。ロンドン交通局は、苦境からの脱出と引き換えに、大きな代償を背負ったのかもしれない。

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