日本より厳しいコロナ「ロックダウン」でも ロンドン交通局が“バス大量廃線”を免れたワケ
コロナ禍で都市交通が苦境に陥ったのは、日本もイギリスも同じだ。ロンドン交通局の危機を振り返る。
パンデミックから3度の値上げ

2022年3月、ロンドン交通局は運賃の値上げを行った。バスや地下鉄などの運賃、定期券など平均4.8%の値上がりとなった。
2022年9月には、ヒースロー空港とロンドン中心部を行き来する際の地下鉄や鉄道の運賃、そして新規オイスターカード(ICカード)料金の値上げを行った。物価高を心配するロンドン市民や、空港に勤務する人々の通勤等に影響が及ばないよう配慮(イギリスでは通常、通勤の交通費が会社から支給されない)し、国内外の旅行者にのみ負担がかかるものだった。
これらにより、年間最大 2700 万ポンド(約43億4700万円)の追加収入を得られることになった。「2023 年 4 月までに、財政的に持続可能にする」という政府が求めた条件(資金援助の条件)を達成するために必要な値上げだった。
さらに、2023年3月の値上げ予定も発表されている。ロンドン交通局には、地下鉄やバス、トラムなどさまざまな乗り物があり、都度払いや定期券などの運賃体系も幅広いが、平均で5.9%の値上げになる。これは英運輸省が設定した鉄道運賃値上げの上限に該当する。具体的には、地下鉄では都心部で2.5ポンド(約403円)だった区間が、平日のラッシュ時は2.8ポンド(約451円)となる。バスは1.65ポンド(約266円)から1.75ポンド(約282円)と10ペンスの値上げだ。
もうひとつ、以前は60歳以上の平日午前9時前の乗車は無料という特典があったのだが、廃止する旨が発表された。無料特典はパンデミック中に一時停止していたが、完全に廃止するというのだ。これにより、かなりの収入を確保できるはずだ。