ゲーム感覚の「街歩きイベント」が近年大盛況なワケ

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「街歩き」の歴史は長いが、近年はゲーム性を強調した街歩きが広がっている。その背景を探りつつ、情報化時代のモビリティの意味や役割を考えたい。

街を深く知る「きっかけ」

長崎の夜景(画像:写真AC)
長崎の夜景(画像:写真AC)

 実のところ、現在の街歩きには、2000年代以降、地域活性化やまちづくりの手法として普及してきたものも多い。例えば、「日本ではじめてのまち歩き博覧会」を称した2006年の「長崎さるく博」などがあるが、街歩きイベントは大小さまざまなものを含めて、大量かつ、頻繁に日本全国で開催されるようになった。

 街歩きイベントによって、楽しみながら土地の個性を掘り起こし、地域への親しみを醸成する。個人の趣味で楽しむだけでなく、集合的なイベントとして楽しむ。こうした地域おこしの手法としての街歩きは、コンサルティング会社などを通じて、パッケージ化されたイベントとなっている。

 一方、「リアル脱出ゲーム」の商標登録をし、業界をけん引してきた「SCRAP」などのように、近年では「謎解き」を制作し、個別の消費者のみならず、各種自治体・企業・団体に販売する企業も存在する。とりわけ、2000年代以降、テレビのクイズ番組が何度目かのブームとなり、他ジャンルの番組にもクイズ形式の演出が広がっていった。

 そんななか、クイズ制作・流通を専門とした会社も設立され、クイズ形式のコンテンツはテレビの外側により広く展開できる商品として売買されるようになった。このように、「謎解き街歩き」は、別のコンテクストでパッケージ化されるようになったイベントである「街歩き」と「クイズ」が合流したところで商品化されたサービスといえるだろう。

 ただし、そこで提供されている「謎」は、「商品」として売買されるサービスであり、「答え」が用意されている。また、このようなイベントの体験は、その時・その場限りのものになることも多いだろう。

 確かに高度な情報化によって街について「ある程度のこと」が手軽に分かるようになったが、それが街のすべてではない。人びとが暮らす街の奥行きは一過性のイベントやネットの情報で理解できるものでもないし、街自体も変化していく「答え」のないものだろう。

 とはいえ、「謎解き街歩き」で提供される問題の多くは、その土地の地理、歴史、生活のトリビアにひもづけられており、工夫が凝らされている。そのため、ネットの情報で分かった気になるのでもなく、GPSに頼って迷うことなく通り過ぎてしまうのでもなく、その街をより深く知ろうとするきっかけになるかもしれない。

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