ゲーム感覚の「街歩きイベント」が近年大盛況なワケ

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「街歩き」の歴史は長いが、近年はゲーム性を強調した街歩きが広がっている。その背景を探りつつ、情報化時代のモビリティの意味や役割を考えたい。

移動そのものを楽しむ

街歩きがゲーム化?(画像:写真AC)
街歩きがゲーム化?(画像:写真AC)

 モビリティというと一般的に乗りものが想起される。しかし、二足歩行を種としての画期のひとつとする人間の原初的なモビリティは「歩くこと」だろう。人類史は「歩くこと」で始まり、そのモビリティの限界を技術的に拡張していく歴史であったといってもいい。

 しかし、目的地にできるだけ効率的に到達することを競う、高速化する機械交通(鉄道、自動車、飛行機など)が発達すればするほど、「歩くこと」の意味や効用も見直される。例えば「街歩き」は、目的地への移動手段というよりも、移動そのものを楽しむものとして、現代社会において広く受け入れられている。

 近年、カラフルな小冊子を携え、そこに記載されたクイズのような「謎」を解きながら街を歩いている人たちをしばしば都市部で見かける。さまざまなタイプがあるが、ここでは「謎解き街歩き」と仮に総称しておこう。

 その多くは、特定のエリアを指定したキットを購入し、そのマップに従って各所に仕込まれた謎を解いてまわる、といったものだ。スタンプラリーの発展版ともいえるが、ただ移動させるだけではなく、謎を解かせるというゲーム性が加わっている。

 2010(平成22)年ごろから、施設・店舗型の「リアル脱出ゲーム」が増えており、それを街なかへ展開させたものといえるかもしれない。また、ゲーム性を用いた街歩きでいえば、位置情報ゲームや歩いてポイントをためるウオーキングアプリもよく知られている。

 街歩きの歴史は短くないが、このようなゲーム性を強調した街歩きは、なぜ現代社会において広がってきたのだろうか。本稿では、近代日本の街歩きの歴史を振り返りながら、ゲーム化した街歩きが現れた背景を探りつつ、情報化時代のモビリティの意味や役割を考えたい。

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