赤字に悩んだ国鉄、さらなる追い打ちをかけたのは「黄色いもの」だった! 21世紀まで続いた旧式トイレ事情をご存じか
赤字に悩まされた国鉄は「黄色」いものにも悩まされていた。列車のトイレ問題の歴史を振り返る。
トイレに予算割けず
なぜ、当時の国鉄でトイレの垂れ流しが続いていたのか。当時既に、新幹線ではトイレは垂れ流しではなかったし、国鉄でも在来線にタンク式のトイレを装着する実験は実施していた。しかし、遅々として改善されなかった。そのための予算が膨大だったからだ。
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当時の国鉄の試算では、トイレをタンク式にするためには、車両設備に約350億円。汚水を処理する地上設備に約450億円が必要だとしていた。しかも、地上設備を建設するには、周辺の住民との話し合いも必要だ。なにより、当時は首都圏のラッシュが大問題になっていて、通勤列車の新型車両への置き換えが優先されていた。トイレを改善するよりも新型車両の導入による通勤地獄の改善を求める声のほうが切実だったのだ。
トイレの改善に予算は割けない。しかし、沿線からの苦情は増すばかり。そこで国鉄がとった手段は、被害の苦情が多い地域では、線路沿いに高さ約1mの壁を設置して、飛散を防止しようというものだ。もちろん、しぶき自体が収まるわけではない。
『週刊大衆』1968年8月1日号で取材に応じている東京都北区の尾久駅近くの家の主によれば、「食事中に、窓ガラスにピシャリと黄色ものがはねかかる」「そのうち、ドサリ。大きな奴が部屋に舞い込んで」とある。1mの壁では効果などない。結局、国鉄では一部区間でトイレの使用を禁止するアナウンスを流すなど、乗客のトイレ使用を抑制することくらいしか対策は取れなかった。