トラック事故死「年間400人超」 ドライバー頼みの安全対策すぐ止めて、運送業界はAIに投資せよ
最大の課題は安全性向上
なぜ、トラック運送業界の最大の問題が、重大事故が多いことなのか。その理由はシンプルで、人命に直接、そして大きく関わることだからだ。つまり、最も早く達成すべきは安全性の向上である、ということだ。
表を見てほしい。この表からは、トラック事故による年間の死者数が418人(2020年)で、他の自動車事故の死者数より圧倒的に多いことが分かる。そして、重大事故になった際の死者数の割合も、トラックは非常に高い。重大事故発生時の死者割合は、バス全体(乗合、貸切、特定)では約1%、ハイヤー・タクシーでは約10%なのに対して、トラックでは25%以上だ。この結果を見るだけでも、トラック運送業界の最大の課題が安全性の向上である、と言い切っていいのではないだろうか。
人命の問題に加え、事業者の立場から考えてみても、事故によってかかるコストは甚大だ。人的損害や物的損害に加えて、ニュースなどで取り上げられれば、社会的信用にも影響が及ぶ。このことからも、事業者も安全性の向上を最大の課題として取り組むべきだと言えるだろう。
このような話をすると、「事故を防ぐには、運転手が安全運転を心がければいいのではないか」という議論になることがある。実際、事故を直接引き起こしている(もちろん、「もらい事故」もあるが)のはドライバーなので、そのような話になるのかもしれない。しかし、トラックドライバーが業務中、最も意識しているのは安全だ。これは筆者が長年業界で過ごしてきた経験から、確信を持って言える。誰しも自分の命が大切なので、それをおろそかにしたいと思うドライバーなどいないのだ。
ただ、多くのドライバーが細心の注意を払っていても、トラックによる事故は後を絶たない。つまりここには、「安全運転の心がけ」だけではどうにもできない要因が隠されていると言えるだろう。