盗電上等? 「車中泊」マナー違反という現代人の病理、そもそも「道の駅 = 宿泊施設」でないと知れ
「マナー厳守」は大前提

管理者に迷惑をかけない「車中泊」を行う上で、より参考になるのが「駅寝(STB)」である。もともとは登山者が山の最寄り駅で宿泊し、夜明けと共に登山することに由来するとされるが、1980年代には大学生を中心に普及したものだ。駅寝は主に無人駅を利用するのだが、そうした情報をまとめたSTB全国友の会『STBのすすめ』によれば、マナーとして次のものを挙げている。
・最終列車が出るまで寝ない
・駅舎内で火を使わない
・始発列車が入るまでに去る
・ごみはきちんと片付ける
火を使わないことや、ごみを片付けることは当然として、重要なのは、駅寝で利用するのは最終列車出発後から始発列車到着後までに限っていることだろう。あくまで黙認してもらっているのだから、鉄道会社や駅の利用者には絶対に迷惑をかけずに、「仮眠」することを第一義として掲げているわけである。
ちなみに最終列車から始発列車までの間だと、時間はわずかのようにみえるが、本数の少ない路線やローカル線だと、十分睡眠時間が取れる。筆者が駅寝をしたことのある駅についていえば、長野県のある駅は、最終列車が21時半ごろ発で、始発列車が6時半過ぎである。
もっとも、このルールを駅寝する利用者がそろって順守していたわけではない。上越線の土合(どあい)駅では、待合室で火気を利用する事例が多かったことから、2016年以降、待合室が閉鎖されている。
いずれにしても「車中泊」は、利用者が急増したことで、違反者も注目されるようになっているのが、現在の姿である。これを受けて現在、キャンピングカーの普及に取り組む「日本RV協会」でも「公共駐車場でのマナー厳守10カ条」を制定し、マナー向上に取り組んでいる。
道の駅や鉄道の駅、高速道路のサービスエリアなどで寝る行為は、どんな言葉を使おうとも「野宿」の一類型かつ黙認によって成り立っている脆弱(ぜいじゃく)なものだ。マナー違反が注目されてしまえば、その楽しみ自体が消滅してしまう。その視点を共有した上で旅を楽しみたい。