「東京を自転車天国に」 小池都知事の人気取りっぽい発言が、意外と的外れじゃないワケ
「東京都を自転車天国にしたい」──小池百合子都知事の発言に、片山右京氏を始め会場にいた人々からは拍手が湧き上がった。小池知事が言う「自転車天国」の真意と意義を探ろう。
海外における自転車活用施策の状況
自転車の活用推進を、とっぴな政策、もしくは人気取りの手段だと感じる人は一定数いるのかもしれないが、諸外国の都市では、より積極的な自転車活用策に取り組んでいる。
例えば、パリでは、2015年に「Plan Velo 2015-2020」を策定。全交通に占める自転車利用率を5%から2020年までに15%に引き上げる目標を立てた。
イギリスでは2008年に「サイクル・スーパーハイウエー」構想を立ち上げた。2018年のサイクリングアクションプランでは、自転車道から400m以内に住むロンドン市民の割合を当時の9%から、2024年までに28%、2041年までに70%まで引き上げるとしている。
ロンドン市では、2019年に市中心部に対して導入したULEZ(Ultra Low Emission Zone、排ガス基準未対応車が走行すると一定額を課金する仕組みであり、対象エリア)を2023年8月に大ロンドン市全域に拡大する予定だ。自転車の交通分担率を上げようとする一連の施策は、ULEZ拡大にも追い風となる。
脱炭素、SDGsなどの機運が高まり、多くの人がよりエシカル(もともとは「倫理的」「道徳上の」という意味だが、現在では環境保護、社会貢献などの文脈で用いられることが多い)であろうとする今、二酸化炭素を排出せず、健康増進にも貢献する自転車の活用拡大は、理にかなっている。
小池氏の「自転車天国化発言」は、国内ではとっぴに思えるかもしれない。だが、目を海外に向ければ、自動車の交通分担率を下げ、代わって自転車の交通分担率を上げようとする自転車活用の推進は、世界的な潮流と言える。