アマゾン・メルカリをさんざん使っておきながら、配達員の「待遇」にはそっぽを向く一般消費者たち
極めて薄い一般消費者の関心

荷物の輸送が困難になる「2024年問題」を始め、前述のデータからも物流はギリギリのところで維持されている。いうなれば小口配送の多くが
「届いて当たり前」
なのは、もはや奇跡的なのだ。
しかし、この問題に対する一般消費者の関心は極めて薄い。SNSなど個人の発信手段が普及したことで、まれに起こる遅延や破損などが、あたかも未曾有(みぞう)の一大事であるかのように騒がれることも多い。
過去にはホールケーキを宅配便で送ったら、グチャグチャになったとSNSで発信した個人が話題になった事例もある。これは特異な例だとしても消費者の多くは、宅配便が
・時間通りに届いて当たり前
・問題なく届いて当たり前
だと考えており、その当たり前が危機的状況にあることには関心を寄せない。
筆者(昼間たかし、ルポライター)も、宅配ドライバーが繁忙期の朝8時過ぎに荷物を持ってきた経験がある。また最近、インターフォンなしで荷物が置かれていることもしばしばだ。こうしたことからも、宅配ドライバーが過酷な労働を強いられていることは誰もが肌感覚でわかっているはずだ。それでも、自宅に配達してくる彼らの荷物の置き方には文句をいっても、
「彼らの待遇」
には気を欠けることはないのだ。
従事者は減り、年収も低い現実

物流の重要な担い手であるドライバーの問題は、これからさらに深刻化している。
国土交通省などではトラックドライバーを中心に、この問題へのアプローチを試みている。
すでに日本の生産年齢人口全体は減少傾向にあるが、その中でもトラックドライバーは労働環境を原因として人材確保が困難なため、全産業に比べて平均年齢が3~6歳程度高い業種だ。
つまり、今後さらなる人手不足が確定している業種である。
日本ロジスティクシステム協会の「ロジスティクコンセプト2030」よれば「道路貨物運送業の運転従事者数」は2000(平成12)年には約97万3000人だったものが、2015年には約76万7000人にまで減少している。
さらに今後も減少が続けば、2030年には51万9000人にまで減ることも見込まれる。物流を維持し効率化するためには、まず
「担い手の確保」
が必要なのだ。
トラック輸送に限っても、現状で営業費用の約4割を人件費に使っている。しかし、厚生労働省による2020年の「賃金構造基本統計調査」によれば、トラック運転手の年間所得額は全産業平均(487万円)を下回り、大型トラックが454万円、中型トラックが419万円となっている。こちらも危機的状況にあるのだ。まず、労働者のための労働環境の改善と大幅なベースアップが、物流の維持と改善には欠かせない。