ANAの羽田「大型電子看板」撤去に賛否両論! 人命救える設備の今後を簡単に決めてよいのか 「なんでもスマホ」時代に見る公共スペースのあり方とは
1月末、大型デジタルサイネージの撤去に関するANAのツイッター投稿について、インターネット上で賛否両論が渦巻いた。問題の本質は何なのか。
「ANA Smart Travel」普及推進への布石か

反対派の意見のなかには過度なコスト削減の姿勢を危惧する声もあったが、ANAの営業費用は1兆1934億円(2021年度連結決算)なのである。消しゴム1個から削減するといったケチケチ作戦を実行しているならともかく、大型デジタルサイネージの撤去にコスト削減効果を期待しているとは考えにくい。
大型デジタルサイネージの撤去は、単なるコスト削減ではなく「ANA Smart Travel」普及推進および顧客の囲い込みが主眼にあると見てよいだろう。
実際、2021年度決算資料のなかにおいて、事業構造改革のテーマのひとつとして
「顧客データ資産を活用したプラットホームを確立、新たな収益機会を創出する」
ことを挙げている。つまり、旅行事業のデジタルプラットホーム化、スーパーアプリのリリースを通じて、中長期的にはANA経済圏の拡大を目指しているのだ。
一方で、統合報告書(アニュアルリポート)2022の中長期的な価値創造におけるユニバーサルサービスの推進では、
「公共交通機関としての私たちの責務を果たすべく、これからも世界トップレベルの『ユニバーサルなサービス』の提供に向けた取り組みを加速していき、(後略)」
とある。
おそらく、大型デジタルサイネージ撤去やアプリの普及は、中長期的な経営戦略および世界トップレベルの「ユニバーサルなサービス」の実現など、いろいろの経営課題についてANAの中で徹底的に議論して導き出された結論なのだろう。