自動運転時の事故はアルゴリズム製作者の責任? 変わる「運転者」の概念 法整備の行方は
クルマの自動運転で事故が起きたら、誰が責任を負うのか。自動運転普及の“前夜”である今、その論点を整理すべく、SIPが「自動運転時の責任問題に関するセミナー」を開催。現状と今後の法整備などについて意見が交わされた。
「自己の責任は運転者が負う」という原則だと…
今井氏は、クルマの事故の刑事責任は運転者が負うとする原則に照らし合わせると、開発が進むレベル4(特定条件下での完全自動運転)やレベル5(完全自動運転)の車両の「運転者」は、アルゴリズムそのものやそれを作った者になると指摘する。
暫定的な方向性としてアルゴリズムを作った者に刑事責任を問うことになるとしても、例えばトロッコ問題のように、目の前の歩行者をはねるか、無理やり避けて路側壁にぶつかり乗員が犠牲になるか、いずれか二者択一の状態になった場合、アルゴリズムにどう判断させるか――といったケースが生じてくる。
今井氏は、公的機関でアルゴリズム製作者の犯罪成立を認めるべきか否かなどを議論し、これに基づくアルゴリズムの基準を示すべきではないかと提言する。
講義では考え方のアプローチとして、功利主義とカントの義務論、利己主義と利他主義の対比や課題、先行するヨーロッパでの議論内容なども交えて解説。聴取者との質疑では、人命第一主義のヨーロッパに対し、日本やアメリカがどう態度表明するかが問われることになるとの見識も示した。
システムが担う部分と人が担う部分が共存するレベル3(条件付き自動運転)は、いわば「キメラ」としたうえで、現在用いられている自動運転の5段階の「レベル」は、産業・技術育成の面と法整備・責任の面で分けても良いのでは、との考えも明かした。
SIPは、内閣府を中心に産官学・府省が連携して取り組む戦略的イノベーション創造プログラム。自動走行システム・自動運転の分野は2014年度に第1期がスタートし、現在は2018年度に始まった第2期の中間を過ぎた地点だ。東京の臨海副都心や羽田空港の一般道などで、実験データの取得や分析を進めるなど取り組みを推進している。
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