率直に問う 日本はなぜ「戦闘機用エンジン」を国内開発できないのか?

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防衛省は、将来の防空を担う航空自衛隊の次期戦闘機を英伊と共同で開発する方針を定めた。この決定は従来の米国機導入や国内開発とはまったく異なる路線だ。

主力戦闘機の国内開発に向けて

日英伊が共同開発する次期戦闘機のイメージCG(画像:防衛省)
日英伊が共同開発する次期戦闘機のイメージCG(画像:防衛省)

 それでも国内メーカーと防衛省は、将来の主力戦闘機開発を諦めなかった。むしろ、F-2開発の苦い経験から、国内開発能力の必要性が改めて明らかになったと考えた。

 F-2開発の傍ら、防衛庁(当時)と国内メーカーは米国で進むF-22戦闘機の開発を横目でにらみながら、将来必要となる技術の取得やエンジン国内開発の基盤整備のため、研究開発の予算要求に向けて折衝を繰り返した。

 国内開発実現の鍵として課題にされたのは、レーダーに映りにくいステルス技術、胴体内に収容したミサイルの発射技術など、機体設計に関わる技術の研究開発と、戦闘機用エンジンを開発できる施設の整備であった。もはや米国からの技術導入は期待できず、こうした核心技術を独自に獲得する必要があった。

 しかし、このもくろみは思うように進まなかった。

 技術実証機の開発計画は何年も繰り返し却下され、やっと開発が認められたときには中国にも追い越されている始末で、日本は完全に出遅れを強いられた。そして、エンジン開発施設の規模も大きく縮小され、戦闘機用エンジンの開発環境は整わなかったのである。

日本の戦闘機開発を認めない米国

高空性能試験設備(画像:JAXA)
高空性能試験設備(画像:JAXA)

 現代の戦闘機用には少なくとも15t級の推力が要求される。日本でも防衛装備庁と石川島播磨重工業(当時)が「将来戦闘機」研究開発の一環で15t級のXF9エンジンを試作し、地上運転を実施している。戦闘機の国内開発に向けた努力は、この段階までは到達できた。しかし、日本でこのエンジンを実用開発することが不可能なのである。

 飛行機の開発に飛行試験が必要であるのと同様、エンジンも飛行を模擬した試験を行わなければ、実用に向けた開発はできない。その試験方法のひとつが、テスト用の航空機に試作エンジンを取り付けて、上空で運転するFTB(Flying Test Bed、空中飛行試験機)試験である。日本でも、過去にJ3、FJR710、F3、F7といった各種エンジンのFTB試験が行われ、練習機や哨戒機などの国産機に搭載されてきた。

 しかし、戦闘機用のエンジンは推力も寸法も大きいため、この方法では試験できない。そのため、地上に建設したATF(Altitude Test Facility、高空性能試験設備)という設備を使い、高空での運転状態を模擬して試験する必要があるのだが、十分な能力の設備が日本には存在しない。

 日本の航空技術者たちは、将来戦闘機を構想するなかで、当然15t級を試験できるATFの建設を求めていた。しかし、北海道の千歳に建設された防衛装備庁のATF(2001年完成)は、5t級の規模にとどめられた。この時点で、日本の戦闘機用エンジンは、外国の手を借りなければ開発できないことが決まっていたのである。

 こうした決定の背後には、日本による戦闘機開発を認めない

「米国の意向」

もあったのだろう。日本の防衛政策は、常に米国の掌中に握られている。

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