相鉄はかつて「国防」に関わっていた? 背景にあったのは会社を支え続けた「砂利販売業」だった
バブル期に堅調だった砂利販売業
相鉄は子会社を設立して砂利採取・販売業を手がけてきたが、砂利の採取が厳しくなると販売業をメインに切り替えていった。
砂利販売業はバブル期に堅調で1987(昭和62)年度は約54万8000立法メートルの販売量を誇った。
しかし、バブル崩壊で危機に直面。それでも1996(平成8)年には、東京湾アクアラインに伴う工事や東京国際空港の拡張、みなとみらい21地区の造成などによって販売量を約119万立方メートルへと倍増させている。
相鉄の砂利販売業は建物に使われるコンクリートだけではなく、海面の埋め立て工事を得意先にしている。
前述した東京湾アクアライン・東京国際空港・みなとみらい21地区もさることながら、横浜市の南本牧埋立外周護岸地盤改良工事や日本最南端の島でもある沖ノ鳥島侵食防護工事などでも実績を残している。
国防にも寄与していた相鉄
2022年、地方のローカル線が危機に陥った際、鳥取県の平井伸治知事が
「ローカル線の維持は、国防上からも必要」
と訴えたことは記憶に新しい。平井知事の発言を荒唐無稽な話と受け止めた人は少なくないだろう。
沖ノ鳥島は約40万平方キロメートルの排他的経済水域を有し、国土保全の観点からも重要な島と位置付けられている。相鉄のグループ会社が沖ノ鳥島を守る護岸工事の一翼を担っていたことを考えれば、平井知事の発言を一笑に付すわけにはいかない。
砂利販売業を業務にしていた相鉄のグループ会社は、2020年に相鉄グループから離脱。鉄道会社は事業の安定面から世間の信用は高い。ゆえに国家的事業で活躍する場面も多かった。沖ノ鳥島侵食防護工事は、その最たる例と言えるのかもしれない。
相鉄と東急の直通運転の開始で、乗り換えがなくなり交通手段として便利になることは間違いない。しかし、鉄道は単に移動手段という役割を果たしているだけではない。東京や横浜という都市を発展させ、そして時に国防にも貢献してきた。そうした歴史と役割を忘れてはならない。