ブルートレイン消滅の日本と何が違うのか? 欧州で「夜行列車」が増え続けるワケ

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ヨーロッパでは近年、夜行列車の新規路線が毎年のように開設される。日本との違いの理由を解説する。

飛行機にないメリットも

チューリッヒ中央駅で発車を待つ国際夜行列車ユーロナイト。複数の行き先の客車をまとめ、途中で分割してそれぞれの目的地を目指す(画像:橋爪智之)
チューリッヒ中央駅で発車を待つ国際夜行列車ユーロナイト。複数の行き先の客車をまとめ、途中で分割してそれぞれの目的地を目指す(画像:橋爪智之)

 国鉄が地域分割されたことで、ダイヤ作成上のネックがあったり、運賃収入の分配で得をしたり損をしたりする会社が出てしまうことも問題だった。九州方面のブルートレインが存命だった頃、車両の維持管理は両端のJR九州、JR東日本が担当していたが、運賃収入の分配金は走行距離の長いJR東海やJR西日本へ多く渡っていた。これではJR九州とJR東日本に運行を維持するメリットは見いだせない。

 ヨーロッパの場合、上下分離方式とオープンアクセスによって、運賃収入は列車を運行する会社(=車両を維持管理する会社)が全額もらい、そこから走行する各国インフラ会社へ線路使用料を払う仕組みだから、コストを差し引いても十分なお金が手元に残る計算だ。

 最後の、競合する他の交通機関について、日本では、航空機や高速バス、新幹線の発達によって夜行列車利用者が激減したことが、衰退の主たる理由だった。ヨーロッパでも格安航空会社(LCC)や高速路線バスの存在は脅威といえるが、LCCと鉄道は速達性や料金面で完全に競合しているとは言えず、距離や所要時間、目的地などでそれぞれを使い分ける人が多い。

 例えば、フランスのパリからデンマークのコペンハーゲンへ、現在は直通列車がない鉄道で日中に移動する人はいるだろうか。鉄道が好きで、乗り換えがあっても陸路で移動したいという人以外、何本も飛んでいる直行の航空便を普通は使うだろう。

 夜行列車の場合、飛行機の最終便が出発した後に発車し、始発便が到着する前に目的地に到着できる、それでいてある程度の需要が見込める区間、というのが大まかな条件となり、それに高速列車運行の有無なども条件として加わって来るだろう。そうした区間は、新たに参入を目指す民間企業が検討しているルートとして候補に挙がっており、距離や所要時間を考えても妥当なルートといえる。

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