「高速道路、いつかは無料」 かなわぬ夢を国が今でも言い続けるワケ
「高速道路は、いつかは無料になる」。そんな漠然とした希望はついえた。なぜ、国はかなわぬ夢を提示したまま、今に至ってしまったのか。
道路4公団民営化が好機だった
政府が「実は将来の無料化は無理です」と表明する機会があったとすれば、2005年に道路4公団(日本道路公団、本州四国連絡橋公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団)民営化が行われた時だったろう。
道路公団の民営化は、借入金返済に最低限必要な料金収入を得ることができていない赤字道路の増加が原因であった。例えば日本道路公団では、1999年時点で保有していた61路線のうち75%にあたる46路線が、公団が想定した収入を下回る赤字道路となっていた。
例えば、最も赤字額が多かった東京湾アクアラインでは、期限通りに借入金を返済するには1日あたり約3万1500台が通行し、約1億3700万円の収入が必要とされた。ところが実際には、通行量は想定を下回り、1日の収入額が約4000万円だったのである。
このまま事業を続ければ、日本道路公団だけで債務は44兆円まで膨らむとされた。まさに「第二の国鉄」になることが危惧されたわけだ。国鉄の長期債務でも25兆円であった。国鉄に続いて、膨らんだ債務が巡り巡って国民の負担となることは避けなければならない。
しかも、この時点で、東名高速や中央道などの交通量の多い道路では、既に償還が終了していた。それにもかかわらず「プール制」が採用されているため、償還が終了している道路の利用者は、赤字道路の埋め合わせのために料金を支払うという、いびつな構造になっていた。それらの諸問題を一気に解決するのが「民営化による経営改善」だったというわけだ。