「回送ばかりで全然つかまらない」 都内でタクシーが少なくなった3つの決定的要因
東京都内の「タクシー不足」が深刻だ。その原因を考える。
コロナ禍で離職者増える
ふたつ目は、新型コロナウイルス感染症の影響だ。新型コロナ感染者が国内で初めて確認されてから、2023年1月で3年になった。感染拡大当初に比べ、致死率や重症化率は低下しているものの、日々の感染者がかなり多いため死亡者も多く、いまだに収束時期は見通せない。
タクシー乗務員は元々高齢者が多く、感染すると重症化リスクが高い。そのため、家族が心配して離職させるケースも多い。筆者のタクシー仲間の一人も、新型コロナに感染して、残念ながら亡くなった。福島県出身、まだ働き盛りだった。亡くなったのは行動制限も厳しい時期で、仲間の誰一人として香典も持っていけず、非礼をわびた。
タクシー業界全体でも、少なからぬ乗務員が亡くなったのではないだろうか。第8波の今冬は、死者数がたびたび、過去最多を更新している。
これらのことが影響しているのであろう。タクシー業界内の資料によると、2020年3月に6万4554人いた東京都内のタクシー乗務員は、2022年11月には5万4114人と、1万440人の減少となっている。つまり16%という大幅な減少である。
ちなみに、皮肉な現象も起きている。東京では2022年11月、15年ぶりにタクシー料金を値上げしたのに乗り控えもなく、タクシー稼働台数が少なくなったこともあるのだろうが、1台当たりの稼働率が上がっているのだ。稼働平均収入は1年前に比べ、2割超上昇。離職者が増えて、皮肉にも1人当たりの手取り収入が増えたのだ。