「回送ばかりで全然つかまらない」 都内でタクシーが少なくなった3つの決定的要因
東京都内の「タクシー不足」が深刻だ。その原因を考える。
規制緩和の反動
筆者(橋本英男、フリーライター)は、現役タクシー運転手として、東京都の品川、大森、蒲田などの城南地区を主な営業区域にしているが、最近はどこの駅も利用客が行列をつくっている。病院のタクシー乗り場も同様である。特に深夜は、タクシー不足が深刻だ。「走っている車は回送ばかりで、20分、30分待ってやっとタクシーに乗れた」などという話も聞く。寒い冬の夜、1分でも早く家に帰りたいであろうに……。バブル経済時代の金曜日の夜に近い現象と言える。
なぜ、このような事態が起きているのだろうか。
思い返せば2002(平成14)年、小泉純一郎政権時代の規制緩和の一つである「タクシー規制緩和」が実施された。これによってタクシー台数が増えすぎた結果、街中の交通渋滞の深刻化や、客待ちによる違法駐車の横行、過当競争によるタクシー乗務員の収入激減などが起き、これらは社会問題にもなった。
「規制緩和は不況時の雇用の受け皿になった」という肯定的な声もあるが、「車を売りたい自動車メーカー、貸したいリース会社の思惑もあった」といった声もある。
都内でタクシーが減った理由のひとつ目は、この規制緩和の「反動」にあると筆者は考える。緩和後しばらくすると、さすがに都内のタクシー業界も増えすぎに危機感を持ち、保有台数を減らし続けた。乗務員も近年は年間1000人規模で減少している。それで街中のタクシーが見る見る少なくなったと考えられる。