レースで鍛えた技術をフル活用! トヨタが「水素エンジン」を本格始動させるワケ

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プリウスなどのハイブリッド車にいち早く着手したトヨタ。そんなトヨタがなぜいま水素に注目し、開発を進めることとなったのか。今回はその経緯と理由に迫る。

EVの普及は正しいのか

酸素と水素を「燃料電池」に取り込んで電気を作り、その電気でモーターを回して走る「燃料電池自動車」の仕組み(画像:トヨタ自動車)
酸素と水素を「燃料電池」に取り込んで電気を作り、その電気でモーターを回して走る「燃料電池自動車」の仕組み(画像:トヨタ自動車)

 現在、世界的にはEVの台頭が目立ち、トヨタもその開発に力を注いできた。しかし、残念ながら日本全体は後れを取っているのが現状だ。

 トヨタはハイブリッド事業にも早くに手をつけ、プリウスは世界中での高い販売台数を誇っている。しかしながら世界各国の自動車メーカーを見ると、フォードの場合はトヨタよりも3倍の投資額をEVに注ぐことが決定している。

 こうしたなか、EV開発に力を注いだとしても、世界各国の自動車メーカーがそれをはるかに上回る開発を行い、歯が立たないことは容易に予想できる。また日本政府はEVを推奨しているものの、同時に節電も呼びかけている。これは立派な矛盾だ。日本でのEVの普及を考えた際、まず今以上に安定した電力の確保も必要だ。

 さらに、日本の半分の地域では冬になると零度を下回ることも多く、世界でもまれに見る豪雪地帯である。EVの根幹となるバッテリーは低温になると十分な力を発揮できなくなり、リチウムイオンバッテリーの場合は起動すらも難しくなる。

 また、急な雪による立ち往生に直面すると命に関わる危険もあり、日本でのEVの普及を考えた際には問題点も山積みなのだ。

水素エンジンのメリットとは

グローバル累計販売台数が2022年2月末時点で2000万台に到達した「プリウス」(画像:トヨタ自動車)
グローバル累計販売台数が2022年2月末時点で2000万台に到達した「プリウス」(画像:トヨタ自動車)

 豊田社長は以前、

「うるさく、燃費が悪い野性味あふれる車が好き」

と語っていた。この言葉に心を躍らせた車ファンも多いだろう。しかしそうもいっていられないのが自動車メーカーの辛いところだ。石油をはじめとした化石燃料には限りがあり、温室効果ガスの排出などにより地球環境から目を背けることはできない。

 そしてこの環境問題を考えた時、水素エンジンはガソリンエンジンよりも「CO2の排出量が少ない」というメリットがある。また再生可能エネルギーを利用する点においても、水素エンジンの方が“地球環境に優しい”と言えるだろう。

 トヨタとしては、カーボンニュートラルなどさまざまな技術を駆使して、今後の社会問題に向き合う考えがあるのかもしれない。

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