海外駐在員に迫る過激派テロの影 「欧米関連施設には近づくな」 日本企業は今こそ危機管理教育を徹底すべきだ

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海外に展開するモビリティ企業は、駐在員や出張者の安全をどう確保していくべきなのか。今日の世界的なテロ情勢を見ていく。

アフリカは情勢悪化

ワールドトレードセンター跡地(画像:写真AC)
ワールドトレードセンター跡地(画像:写真AC)

 2022年、アルカイダの2代目指導者アイマン・ザワヒリ容疑者がアフガニスタンのカブールで殺害され、イスラム国の指導者2人が相次いでシリアで殺害されたが、今日でもイエメンの「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」、シリアの「フッラース・アル・ディーン(Hurras al-Deen)」、北アフリカで活動する「マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」、ソマリアの「アルシャバブ(Al Shabaab)」、マリを中心にサハラ地域を拠点とする「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」などのアルカイダ系組織、また、エジプトの「イスラム国のシナイ州」、ナイジェリア北東部などを拠点とする「イスラム国の西アフリカ州」、コンゴ民主共和国東部やモザンビーク北部を束ねる「イスラム国の中央アフリカ州」、サハラ地域を束ねる「イスラム国のサハラ州」、アフガニスタンを拠点とする「イスラム国のホラサン州」などのイスラム国系組織が各地で活動している。

 各組織によって構成人数や金銭力、組織力は大きく異なるが、最近でもイスラム国のホラサン州が中国権益を狙ったとみられるテロ活動をエスカレートさせるなど活発に活動している。

 以前と比べ、多くの日本人が滞在する東南アジア、日本が石油の大半を依存する中東では幸いにもテロ情勢は改善傾向にあり、近年、外国権益を狙った大規模なテロ事件は起こっていない。しかし、日本のメディアではほぼ報道されないが、アフリカではむしろテロ情勢が悪化している。特にサハラ地域でテロ事件が増加しており、トーゴやベナンなどギニア湾沿岸諸国は、ブルキナファソやマリからイスラム過激派が南下し、国内の治安情勢が悪化することを強く危惧している。

 また、アフガニスタンでは米軍が2021年夏に撤退し、タリバンが実権を握った中、同国が再びテロの温床になることへの懸念も根強い。イスラム国時のように多くの外国人戦闘員が集まり、そこから国際的なテロリスクが一気に上昇するようなことは考えにくいが、タリバンとアルカイダは依然として密接な関係にあり、アルカイダのメンバーが数百人いるだけでなく、中国が懸念するウイグル系過激派、インドが警戒するパキスタンを拠点とするイスラム過激派など多くの組織が存在しており、ロシアによるウクライナ侵攻や台湾問題を中心とする米中対立など国家間問題に注目が集まる中、こういった過激派組織が勢力を盛り返す恐れもある。

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