貨物新幹線の開発は課題山積 札幌延伸は「本州の食糧供給」に影響しかねない!

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北海道新幹線の札幌延伸工事が進む一方で、開通後に貨物輸送をどうするかという問題が解決していない。現状を解説する。

貨物の6割は農畜産物

北海道新幹線の駅とルート(画像:北海道)
北海道新幹線の駅とルート(画像:北海道)

 もし、函館本線を用いた貨物輸送が消滅したら、日本国内の食糧供給に大きな影響を引き起こすことは避けられない。現在、鉄道で道内から道外に運ばれる貨物の量は、年間200万トン前後となっている。これは、北海道発の貨物全体の1割程度である。残りの9割は海上輸送だ。「1割程度ならば、海上輸送に転換してもよいのではないか」と考えそうだが、そうはいかない。

 全体では1割程度の鉄道貨物だが、そのうち6割は農畜産物が占めている。鉄道を用いて道外に運ばれる農畜産物はさまざまあるが、タマネギの場合は6割が鉄道に頼っている。鉄道で出荷した場合、道外に届くまで遅くても3日程度である。これが船になると1週間程度かかってしまう。鉄道の場合、道内道外ともに多くの貨物駅があり、船よりも早く最寄りの地に配達できるからだ。

 また、船の場合20tコンテナが標準なのに対して、鉄道は5 tコンテナと小口輸送が基本となっており、輸送の際の利便性が高い。天候を理由に輸送が停滞することも、船より少ない。函館本線の貨物輸送取りやめは、既に完成した物流システムを崩壊させることになってしまう。

 2019年にみずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)が、青函トンネルを通る貨物をすべて海上輸送に転換した場合の試算を行っているが、必要な人手や船を確保できなければ、道内経済には1462億円の損失が生じるとしている。

 トラック運転手の不足や輸送費高騰が問題になっている現状を考えると、損失はさらに増えることになるだろう。函館本線の貨物輸送存続は、道や市町村レベルの検討ではすまない。国民への食糧の供給という国家の存続に関わる問題なのだ。

 ところが、国の対応は後手に回っている。2022年8月に北海道の鈴木直道知事は記者会見で、貨物鉄道の維持は「国が中心になって検討を行うもの」との立場を表明した。これに対して、国土交通省では、札幌延伸は並行在来線の経営分離が大前提ということを承知の上で決まったものだとして、国の検討の前に道の考えを示すことを求めている。要は財源もなく赤字の責任を負うことになるので、誰も「ババ」を引きたくないというわけだ。

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