貨物新幹線の開発は課題山積 札幌延伸は「本州の食糧供給」に影響しかねない!
北海道新幹線の札幌延伸工事が進む一方で、開通後に貨物輸送をどうするかという問題が解決していない。現状を解説する。
大動脈も貨物単体では赤字に
北海道新幹線の札幌延伸工事が進む一方で、いまだ解決しないのが、JR北海道から経営分離される並行在来線、函館本線の函館~長万部間の扱いだ。北海道では、第三セクターでの全線維持、全線バス転換、新函館北斗~函館間のみの鉄路維持を、沿線自治体に提示して意見を求めている。さらに、これとは別に貨物をどう維持するかも、解決されていない課題だ。
本来ならば、第三セクターで全線維持することが望ましいが、これは非現実的と認識されつつある。現在の試算では、第三セクターで維持した場合には、経営分離後30年で累積赤字が816億円(2022年8月の北海道による収支予測)に達すると見込まれているからだ。
そこで、沿線自治体が第三セクターでの存続を断念した場合には、上下分離方式で北海道または国が設備を保有する形で、貨物輸送を維持することも検討されている。1日40本余りの貨物列車が運行される大動脈である函館~長万部間は、旅客だけでは赤字(2018年度で約57億円)となっており、JR貨物から支払われる線路使用料と貨物調整金で鉄路を維持してきた。しかし、第三セクターとなった場合には、これが維持されるとしても赤字は避けられない。
要は、この区間の貨物列車は大動脈ではあるが、それ単体では赤字になってしまうシロモノというわけだ。北海道新幹線の札幌延伸時にこの問題が浮上することは、2012年に延伸が認可されていた時点で分かっていたはずである。しかし、誰もがこの問題に触れることを避けたまま、今まで来てしまったわけだ。