赤字ローカル鉄道「税軽減措置」という名の最後通告 人口縮小・経済圏消滅のダブルパンチ、2023年が正念場か?
「副業」に活路求める動き
現在、検討されている固定資産税軽減は、これまでローカル鉄道への税軽減が、基本的には安全性向上などの新たな設備投資に限定されていた措置を、自治体と事業者が協力して行う設備投資なども対象とするものだ。
税が減免されれば、経営難に苦しむ鉄道事業者にとっては大きな助けとなることは間違いない。ただ、手放しで喜ぶことができないのは、決して恒久措置ではないこと。あくまで、経営が安定化するまでという点である。
経営安定までの長期の税軽減は、JR以外でもさまざまな形で実施されている。例えば、関西空港では、対岸と結ぶ連絡橋の固定資産税半額措置が、開業後5年にわたって行われていた。これが半額にされた経緯は実に複雑だ。当初、空港のある大阪府泉佐野市では、鉄道と道路がある連絡橋を「私道」であると判断していた。空港会社が事業に用いる償却資産であり、課税対象というわけだ。これに対して空港会社は、鉄道と道路がある公共用道路なのだから「公道」であり、非課税であると主張し、市ではなく国に対して直接非課税措置を求める要望を行った。その後、話し合いで「5年間は半額」という痛み分けの結果になった。
観光鉄道を走らせるなど、税軽減終了後をアイデアで必死にカバーしているのが、第三セクターのしなの鉄道だ。東京~長野間に新幹線が開通した後に、信越本線の一部を継承した路線である。この路線でも開業した1997年以降、20年にわたって固定資産税を半額にする措置が実施された。
ただ、その間も経営は厳しかった。輸送人口が右肩下がりになった上、2015年に北陸新幹線が金沢まで延伸開業した後は、新たに経営分離された長野~妙高高原間を、北しなの線として継承することになってしまったからだ。
運賃だけでは利益が確保できないと踏んだ同社では、観光列車の宣伝のほか、駅周辺の土地を駐車場やコンビニエンスストアとして活用するなど、「副業」によって、必死に踏みとどまっている。こうした事情を鑑みると、国土交通省の新たな施策には、鉄道を維持するならば、維持できる事業(副業)を検討することを各社に求める意図も含んでいると考えられる。