「鉄オタ = 鉄道会社に就職できない」は結局、本当なのか?
8年越しで夢かなえる
「鉄オタは鉄道会社には就職できない」。これは、鉄道ファンの間では、まことしやかに語られる話だ。しかし、事実ではなく、都市伝説に過ぎない。鉄オタゆえに夢を諦めず鉄道会社に就職した人、中には社長になった人もいるのだ。
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2022年、千葉県のローカル線・いすみ鉄道では運転士の新卒採用を実施した。これは同社にとっては30年ぶりのことだ。同社では最も若い運転士が51歳と高齢化が進んでいたが、30年ぶりに採用されたのは18歳の若者であった。東京都出身のこの若者は、生まれて初めて発した言葉が「はるか(特急のこと)」だったという本物の鉄オタ。鉄道関係の教育を行うことで知られる岩倉高校(東京都台東区)を卒業し、いすみ鉄道に就職したというから、本物である。
ちなみに『千葉日報』(2022年5月4日付)によれば、同社は働き続ける地元出身者の採用を考えていたが、東京都出身のこの若者が「ずっとここに勤める気持ちでいる」と話したことで採用を決めたという。鉄オタかどうかとは別に、一般企業と同じく意欲が最も重要ということだ。
2021年11月に、山形県の山形鉄道フラワー長井線で、地元出身の運転士となり、話題になった30代男性もやはり鉄道ファン。鉄道ファンの父親の影響で子供の頃からフラワー長井線に親しんでいたという筋金入りだ。
しかし、就職までの道のりはかなり困難だった。専門学校で鉄道を学んだものの、新卒当時、希望していた山形鉄道は採用を行っていなかった。ほかの鉄道会社も不合格だったため、夢を諦めて外食チェーンに就職した。しかし、転勤の多い仕事に嫌気が差し、帰郷して転職を考えていたところに、山形鉄道が求人を始めたのである。新卒で夢を諦めてから実に8年越しでの就職であった。
このように、別の仕事に就いていた鉄道ファンが鉄道会社に転職するという事例はけっこうある。2018年に長崎県の島原鉄道に採用された男性は大阪府出身。もともとは乗り鉄だったが「乗る立場から、中の人になってみたい」と考え、Iターンして島原鉄道に就職している。