「新幹線の技術が中国に盗まれる」 JR東海・葛西敬之が危惧した過去と現在、安倍晋三との蜜月で政府と一体化した「最後のフィクサー」とは
リニア建設を決断した人物
今回紹介する森功『国商 最後のフィクサー葛西敬之』(講談社)のタイトルにある「国商」とは、「国士」と「政商」から著者がつくった造語である。国のために尽くす「国士」と政治家とつながってビジネスを行う「政商」、本書の主人公である葛西敬之にはこの両面があるというのだ。
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葛西敬之といえば、国鉄民営化を進めた井手正敬、松田昌士と並ぶ、いわゆる
「国鉄改革3人組」
のひとりとして知られ、民営化後はJR東海の社長・会長になり東海道新幹線に「のぞみ」を導入し、リニアの建設を決断した人物だ。
一方で、葛西は亡くなった安倍晋三元首相と近い人物としても知られている。安倍の国葬において菅義偉前首相による弔事が注目を集めたが、この弔事で引用された岡義武『山県有朋』を安倍に薦めたのが葛西だといわれている。また、第1次安倍政権において首相の肝いりで始まった教育再生会議にも葛西は委員として選ばれており、早くから安倍と深い関係を持った財界人であった。
葛西はもともと政界においては東大時代の同級生の与謝野馨を応援しており、2000(平成12)年には与謝野を総理にするために財界に声をかけて、富士フイルムホールディングスの古森重隆とともに「四季の会」を結成している。この四季の会に、与謝野が「若くて将来有望な政治家だ」と安倍を連れてきたという。
リニアの見学会において安倍の前で中国を批判し、また自ら海陽学園の理事長を務めるなど教育にも熱心だった葛西は、安倍と政策やイデオロギーの面で一致していた。日本会議の中央委員を務め、靖国神社の総代も務めたという葛西にとって、安倍はまさに推せる政治家だったのだ。