「ウーバー」「アマゾン」は配達員を軽く見ているのか? 酷使が招くビジネスモデル崩壊、元経験者も「タクシーのが楽で儲かる」の本音
目先の利益より、貨物軽自動車運送ビジネスの育成を考えよ
ウーバーイーツにしても、Amazonにしても、なぜ自らのビジネスをつぶすようなことをやっているのか、と感じるのは筆者だけだろうか。
いずれも、商品が消費者の手元に届かなければ、売り上げにはならない。つまり、ウーバーイーツにおける配達パートナーや、Amazonにおける貨物軽自動車運送事業者は、売り上げを確定させ、商取引を完結させるための最後のプロセスを担う、大事なパートナーのはずである。
にもかかわらず、両社のこれまでを見ていると、「労働関連法令などをかいくぐり、グレーゾーンギリギリで、いかに配達の担い手を酷使できるのか」を模索し続けているように見える。
その行為は、結局のところ自らのビジネスモデルを崩壊へと導いているのではないか。
そんなことをせず、個人事業主らが「配達」という仕事を通して、健全に働き、安心して生活できる新たなエコシステムを、なぜ育成しようと考えられないのか。それが、両社のビジネスの安定と発展につながるはずなのに…。
先日タクシーに乗車したとき、筆者が物流ジャーナリストと知ったタクシー運転手が、こんなことを言っていた。
「いや、実は私も2年前まで貨物軽自動車運送事業者だったんですよ。Amazon Flexもやりましたし、ヤマト運輸の下請けもやってました。
でもねぇ、私から言わせれば、どっちもどっち。酷使されるばかりでとてもやっていられないです。タクシー運転手をやっている今のほうが、体も楽ですし、収入も高いですよ」
こと貨物軽自動車配送事業に関する限り、課題はAmazonだけではなく、業界全体にあるようだ。
トラックドライバー不足が社会問題となって久しい。だが、トラックドライバー不足が解消することはない。理由は少子高齢化が進む日本において、他の人気職業を差し置いて、トラックドライバーが人気職業となり、ドライバー不足が解消する目などあり得ないからである。
一方で、(それが自転車であれ、軽貨物自動車であれ)個人事業主を配達の担い手として育成・拡大することができれば、「運びたくても運べない」物流難民を減らす方策の一つとなりうる可能性は大きい。
だから、国土交通省は軽貨物自動車に限ってきた貨物軽自動車運送事業を、軽自動車にまで拡大することを許可したわけである。
今回、東京都労働委員会が交付した命令書が、ウーバーイーツの配達パートナーや、Amazon・宅配事業者らが下請けとして使う貨物軽自動車運送事業者らといった「配達の担い手」が健全に働くことができる転機になることを、心から期待したい。