東京メトロの技術はなぜ常に最先端なのか? 地下鉄開業95周年を機に考える
時代の先取りし過ぎや遅れたものも

銀座線開業時から車両技術が高いゆえ、あらゆるものに挑戦してきたが、うまくいかなかったものもある。
1つ目は車両冷房。地下トンネル内では車両の排熱がこもることから、長年にわたり、冷房装置の導入に消極的だった。営団地下鉄時代に開業した有楽町線、半蔵門線、南北線は当初から全列車省エネ車両に対し、千代田線以前は車両の排熱量が多い抵抗制御の車両が中心だったため、地下トンネル内に熱がこもりやすい状況だったのだ。
営団地下鉄はトンネル冷房を導入し、地下トンネル内の温度上昇を抑え、車両の側窓、屋根上に設けられた通風機から冷気を取り入れた。一石二鳥の効果を狙ったものと思われるが、車内でトンネル冷房効果がどれほどあったのかは不明である。
乗客や相互直通運転を行う鉄道事業者待望の車両冷房が導入されたのは1988年。以降、8年にわたり車両の冷房化を推進した。
2つ目は車内の電照広告。6000系ハイフン車(試作車)の荷棚上に照明をしのばせ、紙の広告を光らせるものだった。しかしながら、量産車では不採用になってしまう。どうやら時期尚早だったようだ。
21世紀に入ると、思わぬ展開で電照広告が普及する。
2002年にJR東日本E231系500番台、東京急行電鉄(現・東急電鉄)2代目5000系が乗降用ドア上の旅客情報案内装置として、2画面式のLCDを採用したのだ。右側は次駅案内等に対し、左側はデジタルサイネージで、まさに「現代の電照広告」である。東京メトロでは2006年登場の10000系(有楽町線および副都心線用)から、ようやく電照広告の採用に踏み切った。
3つ目は現代の省エネ車両であるVVVFインバーター制御。実は6000系ハイフン車で、日本初の実用化に向けた試験が行われていた。当初は01系での採用が検討されていたが、初期費用の高さを理由に見送られ、新たに「高周波分巻チョッパ制御」という制御方式を開発した。
営団地下鉄がVVVFインバーター制御の採用に踏み切ったのは、1990年に登場した南北線用の9000系からである。1993年以降、チョッパ制御の採用をとりやめ、最新技術を積極的に導入してゆく方向に切り替えてゆく。
現在では丸ノ内線、日比谷線、半蔵門線でATCに代わる新たな保安装置、無線式列車制御システム(CBTC、Communication Based Train Control)の導入に向けて、開発を進めている。
あと5年で地下鉄開業100年を迎える。東京メトロは、ますます進化してゆくだろう。