ドラレコ「録画中ステッカー」にドライバーの不満爆発? でも、なんやかんやで貼らねばならぬ現実と事情

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「ドラレコ搭載車」や「録画中」のステッカーが広まってきた。このステッカーが一部のドライバーの反感を招いている。なぜ嫌がられるのか。なぜ嫌がられても貼るドライバーが増えているのか、解説する。

肖像権の争い回避

ドライブレコーダー(画像:写真AC)
ドライブレコーダー(画像:写真AC)

 では次に、

・ドラレコを搭載した車に「録画中」ステッカーの掲示義務はあるのか
・ドラレコによる撮影は肖像権の観点から問題ないか
・ドラレコの映像は、「録画中」ステッカーがなかったとしても証拠になり得るか

 について触れていきたい。

 まず、ドラレコ搭載車による「録画中」ステッカーの掲示義務についてであるが、結論から言って、掲示義務はない。すべての車に掲示する義務が法律で定められているステッカーは、検査標章(車検シール)と保管場所標章(地域によっては不要)の2つだけである。続いて説明する肖像権と関連した話になるが、肖像権に考慮してステッカーで「録画中」を表明する必要性もなさそうである。

 速度違反取り締まり装置が設置された道路の脇に、「自動速度取締機 設置路線」という青い看板が立っているのをよく目にする。これは肖像権に配慮して設置されたものだが、1986年、最高裁で「犯罪の証拠をおさえるために緊急に撮影されているだけなので、肖像権の侵害などには当たらない」といった旨の判決があり、以降基準とされている。

 とはいえ、「録画・撮影しますよ」と前もって告知しておくことで、のちに裁判で肖像権を巡って争う可能性を回避しやすくする、という狙いもあるらしい。速度違反取り締まり装置の撮影については「肖像権の侵害に当たらない」という考え方があるものの、結論が決まりきっていても、争いになると面倒なので、それを回避しやすくするための試み…とのことである。

 これがドラレコにも適用されると考えられる。ドラレコが事故・犯罪を証拠として記録する目的で用いられる限り、その映像は肖像権の侵害に当たらない(もちろん、その映像をネットにアップする…となると話はまったく別である)。

 そしてその映像は、刑事および民事両方の裁判で重要な証拠となり得る。証拠として採用するかの判断は裁判官に委ねられるが、現場の状況を記録した客観的な記録であるから、判決や過失割合の決定といった極めて重要な局面で証拠として参考にされることもある。その映像の証拠能力が、「『録画中』ステッカーがあるかないか」によって変わることは原則的にないと見て良さそうである。

 以上が「録画中」ステッカーについてのあれこれであった。簡単にまとめると次の通り。

・貼っておくと後続車に注意を促せる
・掲示義務はない
・ドラレコ撮影の映像を、事故や犯罪の現場を記録するためだけに用いるのであれば、貼らなくても肖像権の問題はない。ただし、貼ることで肖像権についてもめる可能性を減らせる。
・「録画中」ステッカーに書かれている文言やイラストによっては、後続車の反感を招くことがある

 憎むべきはあおり運転のはずなのに、その周辺で憎しみが生まれてしまうのは悲しいことである。「録画中」ステッカーを見ていら立ちを覚えることがあるかもしれないが、ステッカーを見た人も、ステッカーを貼っている側の人も、あおり運転を許せない気持ちは同じはずである。先述したように、ステッカーの言い回しにも差があり、「後続車のドライバーの気分」に配慮した選択も可能だ。

 貼る側はステッカーの選択などで配慮しつつ、見る側は先行車の心情をくみ、両者が「共通の敵」を改めて思い出すことで、不要ないさかいが回避できれば幸いである。

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