別名・ハマの山手線 「横浜環状線構想」は結局実現するのか? 相鉄東京乗り入れで、横浜財界ビクビクの現実とは

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300万都市・横浜をぐるりと回る“ハマの山手線”――そんな「横浜環状線」構想が半世紀以上も棚ざらし状態であることを知る人は少ない。

「偉大なるベッドタウン」からの脱却

横浜市(画像:写真AC)
横浜市(画像:写真AC)

 環状線のルーツは意外に古く、高度経済成長期の1960年代に横浜市がうたった「六大事業」の柱のひとつとして顔を出したのが始まりだ。このときはまだ、東急東横線綱島(日吉駅の隣)~鶴見(当時は国鉄)間に市営鉄道を通し、沿線住民の利便性と両路線のアクセス路線として鉄道ネットワークの拡充を図るというのが主目的で、環状線の概念はなかった。

 1980年代半ばになると、いよいよ国の答申として根岸~二俣川方面の新路線計画が持ち上がり、さらにこれを起爆剤に1990年代半ばには当時の高秀秀信市長が策定した5か年計画「ゆめはま2010プラン」のなかで、「シティループ(横浜環状鉄道)」を鮮明に打ち出した。

 高秀氏は、「偉大なる東京のベッドタウン」という地位に甘んじて、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に長時間揺られ、東京都内に通勤・通学するのが横浜市民のごく普通の姿、という実情から脱却し、「横浜らしい魅力ある街づくり」を目指した。

 要するに高いブランド力を誇る「ヨコハマ」にさらに磨きをかけ、横浜単独でも強力な求心力・集客力を発揮できるように、まずは足元の交通ネットワークを整備して、便利で住みやすい都市づくりが必要、という「三段論法」を説いたのだ。

 実際、地図を広げればわかるが、市内の鉄道網は確かに横浜都心や東京都内へのアクセスに優れる反面、日吉~鶴見、二俣川~上大岡など市内の主要拠点間の連絡が非常にまずい。まさに、車軸を中心にスポークが放射状に延びている自転車の車輪と似た「ハブ&スポーク」そのものである。

 近隣同士のアクセスがままならないようでは魅力ある都市づくりなどできないと高秀氏は判断し、

「自宅から駅へ、駅から市内の各拠点へと速やかに移動できる交通ネットワークを整備することも重要」

と訴えた。みなとみらい線やグリーンラインの実現は“高秀構想”のまさに具現化で、その延長線上にあるのが環状線でもある。

 2016年には、国交省の諮問機関「交通政策審議会」による答申「東京圏における今後の都市鉄道のありかた」(198号答申)のなかでも、「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として、16路線ある案のうちのひとつに選ばれるなど有望視される。

調査費激減、横浜市のトーンダウン明らか

鶴見駅(画像:写真AC)
鶴見駅(画像:写真AC)

 ところがここへ来て、市の腰は何となく重たそうだ。同答申の翌年の2017年度には1000万円の調査費を計上したものの、その後は漸減し、2020年度から3年間は毎年300万円の予算に過ぎず、トーンダウンは明らかである。

 その理由は、

・莫大(ばくだい)な建設費
・利用客の少なさ

で、同答申でも「事業性に課題あり」とのただし書きがなされ、市による事業性の確保や整備効果や事業性の高い区間を優先することを期待する、との“診断”もなされている。

 実際、同答申前の2014年に市が独自に試算し、全線の総事業費は約7700億円で、

1.日吉~鶴見間:1100~1300億円、利用客3.6~5.1万人
2.中山~二俣川間:1400~1500億円、同2.9~3.4万人
3.根岸~元町・中華街間:1300~1400億円、1.7~1.9万人

と見積もっている。ちなみに、3区間の事業額を合わせても7700億円の半分強で、残り3000億円超の使い道についてはよくわからない。

 また利用客の規模に関してだが、「1」と「2」はまずまずなものの「3」は

「江ノ島電鉄と同レベル」

のようで、費用対効果の点で難があり、市側も「黒字化は困難」と認識しているらしい。

 このため、同区間は通常の電車を通すフル規格ではなく、横浜市磯子区の臨海地域を走る金沢シーサイドラインや東京臨海副都心のゆりかもめのような新都市交通システムを通すことも選択肢として考えているのでは――とも見られるが、それでも将来的に単年度黒字にこぎつけるかどうかは不明だろう。

 しかも、2014年当時の7700億円は、その後の物価高・人材不足を考えれば1兆円の大台を軽く突破すると見るのが常識で、市としてもおいそれと手が出せない、というのが本音のようだ。

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