ドーハメトロに続けるか? 三菱重工業「交通システム事業」の知られざる可能性とは

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FIFAワールドカップ・カタール大会で、サムライブルーが快進撃していたなか、三菱重工業がリーダーとする5社連合が手掛けてきたドーハメトロもひそかに注目を浴びていた。

手広い三菱重工業の事業の中身

三菱重工業のウェブサイト(画像:三菱重工業)
三菱重工業のウェブサイト(画像:三菱重工業)

 三菱重工業が鉄道車両を手掛けてきた歴史は古く、1910(明治43)年に鉄道院の客車や、土佐電気鉄道の電車を受注したことから始まる。以降、蒸気機関車244両、電気機関車100両など、さまざまな鉄道車両を生み出してきたのだ。

 とはいえ、三菱重工業が手掛けているのは鉄道だけではない。むしろ、三菱重工業と聞いて、鉄道車両や交通システムを思い浮かべる人の方が少ないだろう。三菱重工業は、次の四つのセグメントに事業を分類している。

・エナジー:ガスタービン/コンバインドサイクル発電プラント(GTCC)、原子力など
・プラント/インフラ:製鉄機械、機械システム、商船など
・物流/冷熱/ドライブシステム:物流機器、エンジン、冷熱など
・航空/防衛/宇宙:戦闘機、艦艇、CRJ、ロケットエンジンなど

 川崎重工業、IHIと日本三大重工の一角をなし、「機械のデパート」と呼ばれるだけはある。とにかく手広い三菱重工業の事業の中身からすると、交通システムに“おまけ感”を感じるのは無理もない。しかも2018年1月からは、三菱重工業本体ではなく、新会社の三菱重工エンジニアリングが、交通システム事業を担ってきた。

三菱重工業が培ってきた鉄道システム

マカオLRTタイパ線(画像:三菱重工業)
マカオLRTタイパ線(画像:三菱重工業)

 さて、三菱重工業が手掛けてきた鉄道システムの話に戻そう。三菱重工業は、国内外においてゴムタイヤ式新交通システム(AGT)や鉄道システムを受注してきた。日本では、

・東京ゆりかもめ
・埼玉新都市交通ニューシャトル
・日暮里・舎人ライナー
・広島新交通アストラムライン

の車両を製作している。

 海外におけるAGT分野では、韓国や中国、アメリカ、シンガポールなどの国際空港のAPM(全自動無人運転車両システム)がある。このほか、台湾高速鉄道や、メトロ分野では、フィリピン マニラ、UAE ドバイメトロなどにも参画してきた。また、2022年4月には、マカオの次世代型路面電車(LRT)延伸プロジェクトを受注し、駅舎建設や土木工事、車両を除くシステム一式を担当すると発表している。

 このように三菱重工業の受注実績を俯瞰(ふかん)してみると、新交通システムといった比較的小規模な鉄道システムが中心であることがわかる。実際、

「国内やシンガポール、韓国、ドバイなど世界各地での豊富なAGTの納入実績と質の高いO&M(運用・保守)サービスが強みで、国内外の新交通システム市場でトップを争う地位にあります」

と、同社の主戦場は新交通システムだとはっきりとうたっている。

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