パッケージツアーより安い? コロナ禍で旅行会社が売り込む「ダイナミックパッケージ」 とは何か
団体ツアーからシフトしつつある理由

ダイナミックパッケージはなぜ普及したのか。それはまず、旅行代金が安いからだ。大手航空会社の航空券は、通常「出発75日前」など相当前に予約購入すると安くなるが、出発が近くなるにつれて高くなる。これが往復分と人数分、さらに宿泊費となると、国内でもかなりの出費を強いられる。
ダイナミックパッケージの場合、往復の飛行機代に加え、ホテルは最低1泊すればよく、特に出発日が近い旅行で重宝する。目的地と出発地が異なる場合や、周遊旅行で使えるのも便利だ。
2020年のGoToトラベルや2022年の全国旅行支援などで、ダイナミックパッケージを含む交通付き旅行商品のほうが、宿泊のみの利用よりも割引率が高かった。これがさらなる普及につながったと言える。
なお、全国旅行支援の場合、新型コロナワクチン3回接種済み、または新型コロナ検査の陰性証明書、身分証明書(実物)の提示が必要だ。例えば、団体ツアーでひとりでも対象外がいると、ツアー参加者全員は割引などを受けられない。そのため、旅行会社としてもリスクが大きい。個人旅行者向けに販売するダイナミックパッケージはそのリスクがなく、販売に力を入れる傾向が高まったとの見方もある。
旅行会社・旅行者の双方にメリット

この動きは、海外旅行の旅行商品でより顕著だ。新型コロナの感染拡大以降、ほとんどがいまだ、ダイナミックパッケージである。以前のような
「全食事付き、添乗員付き」
などの団体ツアーは、まだ数えるほどしかない。団体ツアーの参加者がひとりでも体調を崩してコロナ陽性になると、ツアーはその場で中止となる。そのため、今は価格が多少高くとも、個人向けに旅行商品を販売するほうがリスクは少ない。ほかには出入国条件、為替の影響などもある。
ダイナミックパッケージは、旅行会社にとっても旅行者にとっても、メリットが大きい。旅行代金をできるだけ安くしたいと考える旅行者は多く、また、旅行会社としても空席や空室を埋めやすいだけでなく、予約と同時購入で販売しやすい。特に新型コロナ禍では、「三密(密集、密接、密閉)」を避けるという意味でも、団体ツアーより個人旅行のニーズが高まっているのだ。