長野「公園廃止問題」を炎上させる感情的な人たち 「老人クレーマーvs子育て世代」という単純な図式を捨て、まずは公園の歴史を学べ

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長野市にある青木島遊園地の問題がインターネット上で話題となっている。しかし、明治以降の公園整備史をたどってみると、これを勧善懲悪で語れない部分が多々あるのだ。

多数の種類が存在する「公園」

青木島遊園地(画像:(C)Google)
青木島遊園地(画像:(C)Google)

 長野県長野市にある青木島遊園地の問題が、全国的なニュースになって注目を集めている。青木島遊園地は、「遊園地」という名称こそ付いているものの、東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのような遊園地ではない。

 長野市では一般的には公園と呼ばれるオープンスペースを遊園地と呼ぶケースがあり、長野市のウェブサイトでも

「小規模な公園や緑地のことです。長野市内には現在約520の遊園地があります」

と説明されている。

 誰もが自由に遊べ、気軽に散策できる公園は地域住民の憩いの場にもなり、近隣の保育所・学校などから子どもたちの遊び場にもなる。青木島遊園地もそうした機能を有していた。

 報道では、近隣住民ひとりが「子どもたちの遊ぶ声がうるさい」と苦情を入れたことによって、市が公園の閉鎖を決めたとされる。そのため、SNSでは苦情を入れた住民をクレーマー扱いする論調が目立ち、また影響力のあるインフルエンサーからも「子どもが公園で自由に遊べないことはおかしい」と問題視する発言が相次いだ。

 これらによって犯人探しに問題の焦点が当てられ、青木島遊園地をめぐる問題は

「高齢者vs子育て世代」

という単純な図式で語られるようになってしまった。

 これでは感情だけの議論になって解決策は見いだすことはできない。それは、仮に青木島遊園地の問題は解決できても公園が抱える根本的な問題を解決することはできない。

 後述するが、日本全国でも同種の問題を抱えている。いつ同様の騒動が発生するかはわからない。そのためにも、青木島遊園地の問題はきちんと問題点を整理して解決していかなければならない。

 世間の耳目を集めることになった長野市の青木島遊園地だが、これは公園行政の難しさを端的に表しているといっていい。公共施設において身近な公園が、実は複雑であることが知られていない。そのため、ひとくくりに公園と捉えられてしまう。私たちが普段から公園と呼んで親しんでいるオープンスペースには多数の種類が存在し、それらは設置の根拠となる法令や所管する官庁も異なるのだ。

 長野市のウェブサイトを見ると、長野市が都市公園と規定している公園・緑地は全126か所ある。その内訳は

・街区公園:85
・近隣公園:23
・地区公園:6
・総合公園:3
・運動公園:2
・特殊公園:3
・緑地:4

となっている。

 これは公園を役割から分類したもので、このうち街区公園・近隣公園・地区公園は「住区基幹公園」と呼ばれる。住区基幹公園は一般的に近隣住民のための公共スペースと解釈され、都市生活に不可欠なインフラとして位置付けられている。近所にある公園も、多くは住区基幹公園と考えて差し支えない。総合公園と運動公園は判別しづらいが、少し大きめの公園で、スタジアムや競技場といった運動施設が付帯されている公園と考えればいいだろう。

 こうした公園の分類において、あまり聞いたことがないのが特殊公園だろう。国土交通省は特殊公園を

「風致公園、動植物公園、歴史公園、墓園等特殊な公園」

と定義している。東京で例えるなら、上野恩賜公園や青山霊園などが特殊公園にあたる。青木島遊園地のように、公園という名称でなくても公園として扱われるオープンスペースは多々あるのだ。

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