疑問だらけの東京「臨海地下鉄」 成功するには「公設民営」上下分離の整備しかない!

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東京都は、都心と臨海部を結ぶ約6kmの地下鉄新線の事業化に着手する考えだ。起点は首都の玄関口である東京駅とし、銀座や築地、豊洲などを経由して、有明まで全7駅を設け、2040年代前半の開業を見込んでいる。

不動産開発利益還元方式の有効性

中央区の晴海エリア(画像:(C)Google)
中央区の晴海エリア(画像:(C)Google)

 香港は、地下鉄などの軌道系都市交通が整備されると地価が高騰するため、公が土地を事前に取得する。そして地下鉄などが開業して実際に地価が高騰すると、その土地を売却することで建設費の償還を進めている。

 これを「不動産開発利益還元方式」と呼ぶが、東南アジアで軌道系都市交通を整備する際、盛んに使われている。見方を変えれば、行政による

「地上げ」

であるため、反発も予想される。それゆえ筆者(堀内重人、運輸評論家)も、このようなやり方は賛同できないが、実は戦前の日本でも検討されていた。

 1940(昭和15)年は紀元節で皇紀2600年に該当する年であるだけでなく、東京オリンピックと万国博覧会の開催が計画されていた。そこで当時の東京市は、東京オリンピックと万国博覧会を前にして、値上がりが予想された公有地を売却して、地下鉄を建設する費用に充てる考えでいた。ところが前年の1939年に欧州で第2次世界大戦が発生したため、東京オリンピックや万国博覧会が中止になり、土地の価格は上がらなかった。

 当時の東京市の人口は580万人程度と、現在と比較して半分程度だった。現在は地価を上げて公有地を売却する行為は問題視されるが、地価が上がるということは、行政にとれば

「固定資産税が増加する」

ことになる。建設費は約5000億円と膨大であるため、運賃だけで償還しようと思えば、長い年月が必要で、また割高な運賃設定をしなければならない。逆に運賃が高過ぎると、利用が低迷して思うように償還が進まなくなる。

 というわけで、筆者は今後、固定資産税の増加分も建設費の償還に充当する必要があると考える。

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