ジャンボフェリーの新船「あおい」は高速バス勢に勝てるのか? 神戸~高松10月就航、しかも「ひとり用個室」がないワケとは

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10月22日に就航したジャンボフェリーの新船「あおい」。その魅力と旧船との違いとは。

ひとり用個室がないワケ

ロフト個室(画像:堀内重人)
ロフト個室(画像:堀内重人)

 りつりん2とこんぴら2にはひとり用の個室が15室設けられており、各個室にはコンセントだけでなく、枕、羽毛布団、シーツ、ナイトテーブル、ロックキー、枕カバー、耳栓、ハンガーラックが備わっていた。ひとり用の個室は運賃に2200円プラスすれば利用できるため、夜行便では満室になったりするほどだった。ただ、座敷席やリクライニングシートの座席しかなく、それらは自由席だった。それゆえ、コロナ禍において、旅客サービス上、問題がなかったわけではない。

 そうした背景もあり、あおいは「三密(密閉・密集・密接)」を回避するため、個室や座席指定などの比率が高くなっている。だが、ひとり用の個室を備えておらず、コンパートメントは3人用の個室だが、椅子席となっている。

 のびのびバルコニー個室は1室当たり8000円だが、6人用の個室。また、のびのびファミリー個室の定員は6人だが、こちらは1室当たり6000円と、バルコニーが付かないぶん、価格面でも割安となっている。ロフト個室は、二段ベッドからなる定員ふたりの部屋で、1室当たり3000円だ。

 これらの個室はカーペット敷きやマット敷きとなっており、遠赤外線を使用した床暖房が完備されるなど、設備面でも充実しているが、りつりん2とこんぴら2の個室に備わっていた、布団や枕、シーツなどが備わっていない。考え方を変えれば、

「ある面ではサービスダウンしている」

といえる。

 ジャンボフェリーは、家族連れや友人同士などの顧客を獲得したいという考えがあった。ひとり用の個室なら単身者しか呼び込めない。4人用、6人用などの個室を備えれば、自家用車で旅行する人たちを高速道路などの走行から

「フェリーへシフトさせる」

ことが可能となる。単身者が個室の利用を希望すれば、定員ふたりのロフト個室を販売できる。これは諸外国のホテルの考えで、ツインベッドやダブルベッドを主流にすることにより夫婦などの需要に対応しているのと同じだ。

 ということもあり、ジャンボフェリーはひとり用の個室を設置するより、ふたり用、4人用、6人用で利用できる個室を設定した方が、経営上有利となるのだ。

速達性で高速バスに負けず

新船「あおい」(画像:ジャンボフェリー)
新船「あおい」(画像:ジャンボフェリー)

 さて、あおいの導入効果だが

「定時運航率の向上」

がまず挙げられる。

 りつりん2とこんぴら2は、エンジンの安定性を担保するため、4サイクルエンジンを採用していたが、あおいは燃費を向上させた新設計の2サイクルエンジンを採用したため、逆波時の航行で生じていた遅延が解消され、定時運航率が向上している。

 神戸~高松間は時間帯によって、明石海峡大橋や瀬戸大橋経由する高速バスも競争相手になる。高速バスと比較してに最高速度は遅い(18.5kt)が、フェリーは一直線に進めるため、神戸~高松間を4時間で結べ、速達性で遜色なくなるのだ。

 その上、風呂や足湯、個室が備わり、トイレも充実。売店も備わって、うどんが提供されるなど、高速バスと差別化されている。今後の事業展開にも十分期待が持てるだろう。

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