「鉄道貨物輸送」脱炭素で大注目も 結局、本丸ヨーロッパでも全然拡大していないワケ
国交省の検討会で提示された課題

2022年4月に開催された「第2回 今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」において、ヤマト運輸(東京都中央区)が、ユーザー視点で次を課題に挙げている。
・翌日配達を約束する宅配業界が集中するバッチ(21時)に対して、ダイヤが合っていない
・長距離区間での遅延発生率が関東から北海道17%、九州15.4%と高水準
宅配業界が最も欲しいと思う時間帯の列車は、幹線を夜間に走行する貨物列車である。一方、第1種鉄道事業者のJR旅客各社は、夜間に走行する貨物列車を少なくして保守作業時間を確保したいと、
「物流業界のニーズとは真逆の要望」
をしている。これでは「はい、本数を増やします」と、簡単に返事ができない。
長距離区間での遅延発生率についても、JR貨物だけに責任を帰するのも難しい課題である。また、ヤマト運輸は、
「台風や地震などの災害時においても、復旧の見通しに時間がかかりエンドユーザーに対してフィードバックができない」
と指摘している。
ヨーロッパ・日本ともに多い課題共通点

ヨーロッパと日本の鉄道貨物輸送の課題を比較してみると、意外と共通点が多いことがわかる。
・リードタイム
・使い勝手の悪い列車ダイヤ
・不確実性
・迂回の柔軟性のなさ
など、どれをとってみても鉄道システムの特性に起因している。
鉄道事業者が単独で解決するには大きすぎる課題であるとともに、物流事業者に「だからトラックがいい」といわれても反論する余地がない。また、鉄道貨物へのシフトに対するインセンティブが少ない現状では、地球環境対策として推進するには限界がある。
鉄道貨物輸送をより有効活用するため、
・時間厳守の荷物
・何時でも構わない荷物
に徹底的に仕分けして、何時でも構わない荷物を鉄道に移行させ、かつ
「荷物は4、5日かかるもの」
というスローな社会に変えるソフト対策はどうだろうか。