悪質な「撮り鉄」はなぜ増えたのか? 通行者への止まない罵倒、時代の進化が生んだ怪物と古参ファンの良心

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絶えない「撮り鉄」トラブル。良心的な鉄道ファンはこのことをどう思っているのだろうか。

2010年は「無法な撮り鉄」元年

マナーのいい撮り鉄イメージ(画像:イラストAC)
マナーのいい撮り鉄イメージ(画像:イラストAC)

 この記事では、撮り鉄のマナーについて、こう記している。

「線路内に入って列車を止めてしまう、走行時の写真を撮ろうと沿線を車で追いかける--いずれも鉄道雑誌の出版社の担当者らが聞いた話だ。約3500人の鉄道ファンが参加する「鉄道友の会」事務局によると、最近はデジカメや携帯で列車撮影を楽しむ人が世代を超えて広がっている。自分のブログでいかに早く写真を載せられるかを競い、撮った瞬間に載せる熱心なファンもいるという」

 撮影中の死亡事故はこれ以前から起きているものの、ちょうど、SNSや動画投稿サイトが普及して、悪質なマナー違反が耳目を集めるようになった時期とも合致する。

 実際、この時期から鉄道ファン(周囲に迷惑をかけている時点でファンではないが)の悪質行為は明らかに増加している。『産経新聞』2010年2月7日付朝刊は

「鉄道オタク暴走 接近し過ぎ緊急停止 窃盗行為あと絶たず」

のタイトルで、同年1月の京浜東北線209系車両のラストランでの迷惑行為を記している。以下、箇条書きで引用する。

・車内に陣取ったファンは大半が男性。駅に停車するたび「うおー」と歓声を上げ一斉にプラットホームへ駆けだし、写真を撮ると駆け足で車両に戻る
・少年の背負ったリュックサックが隣の初老の女性に何度もぶつかるが、ファンの誰も少年をとがめようとはしない
・停車駅で一般の乗客が乗ろうとした際、満員の車内から、甲高い叫び声が聞こえてきた。「一般人は乗れませーん」「鉄ヲタ(鉄道オタク)専用車両でーす」

 もはや、無法地帯である。特に2010年は、撮り鉄が線路内に侵入して列車を緊急停止させる事例が浮上した年だ。多くの新聞が

「また列車止める」

といった見出しで事件を取り上げている。検索された記事225件のうち、実に約3割にあたる65件は2010年のものだった。もはや、「無法な撮り鉄」元年といっても過言ではない。

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