米国の新人ドライバーは「年収1400万円」 日本との格差はもはや絶望的、待遇改善のカギは「トラック大型化」も課題山積の現実

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2022年5月、米国の流通大手・ウォルマートが「新人ドライバーを年収1400万円で雇用する」とのニュースが流れた。米国ではなぜこのような価格を提示できるのか。

大型化が進まない理由は何か

日本におけるtクラス別の普通トラックの保有割合(画像:国土交通省)
日本におけるtクラス別の普通トラックの保有割合(画像:国土交通省)

 関係者の努力に水を差すのは本意ではないが、これらの政策の後押しがあるものの、大型化は期待ほどには進んでいないのが実情だ。ダブル連結トラックの導入台数は、今のところ全国で200台程度にとどまっており、導入している企業も数えるほどしかない。

 このように日本で大型化が進まない理由は何か、というと一言でいえるほど単純ではないが、トラック会社の担当者がよく聞く声は

「役所への申請等の手間が大きすぎる」

という点である。

 前述のとおり、ダブル連結トラックを始めとした大型車両の運行には原則として許可が必要であり、運輸局や警察署などへ複数の手続きを行わなければならない。日本の場合、道路の管理主体が自治体ごとにバラバラであることもあって、その申請が非常に複雑である。ひとつの運行のために数十か所の申請が必要といった事例もある。

 なおこの点については近年、大幅に規制緩和が進み、事務処理の負荷は軽減されてきている。とはいえ、中小企業の多い運送業には負担であることは事実であり、今後、さらなる効率化を期待したいところである。

物流の生産性と都市計画の失敗

全国の橋梁(画像:国土交通省)
全国の橋梁(画像:国土交通省)

 もうひとつ、大型化を阻む理由として重要なのが、

・道路が狭い
・橋が老朽化している

などのインフラにおける課題である。

 周知のとおり、都市部では狭い街路沿いに町工場や倉庫が多数立地しており、大型の車両では納品が難しいのが実態だ。道路インフラの関連では、橋梁の老朽化も大きな課題だ。平地が少ない日本の道路は橋梁が多い特徴があるのだが、その多くは高度成長期に建設された、築50年を超えるものが多く、大型車の通行が難しいのである。

 このような問題をどうすれば解決できるだろうか。「道路を作り直す」「頑丈な橋へ架け替える」というのが望ましいのは当然だが、そのような財政的な余裕はない。規制緩和によって狭い道も無理やり通れるようにするというのは現実的ではない。

 このように考えてくると、時間はかかるものの結局のところ

「倉庫などは交通利便性の良い場所への移転を誘導する」

という、都市計画的なアプローチ以外に解決策はないことが分かる。都市計画というと、都市部の生活環境改善に着目されがちだが、物流の生産性を高めるうえでも重要だということだ。

 日本経済の「失われた30年」は、さまざまな課題が未解決のまま積み残されているが、このような物流面の課題もそのひとつである。時間はかかるかもしれないが、今後の解決を期待したい。

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