「バス利用者 = 低所得者」のイメージを大転換! ベトナム初の電気バス会社「ビンバス」の巧みな企業戦略に迫る
ビンバスの三つの特徴

ビンバスの特徴として、主に以下の三つが挙げられる。
・ベトナム初のスマート電気バス
・清潔・快適・安全を追求した車体
・「心からのサービス」による公共バスとの差別化
ビンバスはベトナム初の国産車・ビンファストのスマート電気バスを採用している。バッテリー容量は281kWhで運行継続距離は220~260km。中国企業スターチャージと契約を結び、南アジア地域で最大の電気バス充電ソリューションの契約を結んでいる。
同社のテクノロジーによる高速充電ステーションシステムを使えば、150kWhの充電ステーションでわずか2時間で充電が完了する。スターチャージ社は、負荷管理や電力消費データ分析、充電車両が一定時間に集中しないようにするピークシフトコントロールなどをトータルでサポートしている。
ベトナムの公共バスにはまだ電子決済システムは導入されておらず、バスの社内で添乗員からチケットを購入するスタイルだ。そのため、常に運転手と添乗員のふたり体制だが、車内アナウンスはなく、カスタマーサービスという概念はあまり見受けられない。日本では考えられないが、車内音楽は運転手の好みで選曲される。大音量でラジオや演歌が流れているときもある。
一方、ビンバスは「心からのサービス」をモットーとしている。乗降時には添乗員が朗らかにあいさつをし、乗客は丁寧な接客サービスを享受する。車内アナウンスがあるのはもちろんのこと、車内には心地よいジャズが流れ、無料Wi-FiやUSBチャージなどの設備も整っている。
さらには、バリアフリーが進んでいるとは言えないベトナムにおいて車いす用の昇降スライドを完備し、モニターやセキュリティーカメラ、自動安全警報装置など、今までのベトナムバスには装備されていなかったものがそろっている。実際に、車内の清潔度の高さや乗り心地の良さは、ベトナム人や在越外国人から高評価を受けている。
公共交通機関への意識を変化

ビンバスでは、上記のような快適なサービスを、路線バスと同様に低廉な均一運賃(7000~8000ベトナムドン、約40~45円)で利用できる。宣伝活動を一再せず、主に口コミで評判を広げているビンバス。それにもかかわらず、1回あたりの乗車率は38%~48%を記録している。ビンバス社内の顧客調査では、ビンバスのサービスに関する評価は9.6点(10点満点中)だった。
今までベトナムでは、
「バスは学生や低所得者が乗る」
というイメージが少なからずあったが、ビンバスの登場によりこのようなイメージも変わりつつある。ビンバスの上質なサービスは今までバスに乗ったことがなかった層を取り込むことに成功しており、車内にはスーツ姿の会社員などさまざまな層の利用者がいる。年々深刻になる大気汚染やガソリン価格の高騰といった問題も考慮すると、今後さらに利用者が増えることが予想される。