中国に負けた日本の鉄道 同国受注「インドネシア高速鉄道」試運転成功に見る、痛々しいまでの昭和的反応

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インドネシアが11月16日、中国とともに建設中のジャカルタ~バンドン高速鉄道の試運転を公開した。同鉄道は日本国内から多くのバッシングを受けているが、本当に正しいのか。

今こそ「コペルニクス的転回」を

橋の上からテガルアール駅を望む。シーサスポイントを使わない不思議な配線をしている(画像:高木聡)
橋の上からテガルアール駅を望む。シーサスポイントを使わない不思議な配線をしている(画像:高木聡)

 何でも実地にこだわり、閉鎖的空間で身内の自己満足の如く執り行われる日本式セレモニーとは正反対であるし、そういう

「昭和脳」

があるからこそ、オンライン試運転を針小棒大に攻撃し、同調するやからが出てくるのだろう。残念ながら、SNS活用という面で、日本はインドネシアや中国に圧倒的に引き離されている。仮にそれが、プロパガンダ的に使われているとしても、だ。

 過去の栄光にしがみつき、「日本の技術は最高だ」と声高に叫び、あわや東南アジアの盟主ですらあると勘違いしてる昭和的な自称「愛国者」たちが、皮肉にも国力をそいでいる。

 今回の事例で言えば、

・安全な新幹線
・危険な高速鉄道

という、二項対立的な思考停止である。安かろう悪かろうのメイド・イン・チャイナの時代など、とうに終わっているし、そもそも中国産品抜きに日本の生活など成り立たないにも関わらずである。

 そして、それに勝つべく新たな戦略が全く生まれてこない。壊れたテープレコーダーの如く、安心・安全・高品質と繰り返すだけ。結果、中国に負けたのである。中国側は政府による債務保証を求めず、それから何より高速鉄道の技術移転をインドネシア側に認めたのだ。日本には絶対にできない提案をしてきた。同額か、より高くとも中国案の方が魅力的に映るのも無理はない。

 そもそも、国家プロジェクトにも組み込まれず、時期尚早としてインドネシア側が全く乗り気でないなかで、日本はかたくなに新幹線を押し売りしていた。客は“穴子ちらし”を食べたいのに“うな重”を売りつけていたも同然だ。そこに突如、“ジャワうなぎ”を扱う業者Xが現れて、そちらが売れてしまった。そして、困ったことに思考停止したうなぎ屋の頑固オヤジは、うな重がどうして売れなかったのか、いまだに気づいていない。その間に、業者Xはどんどん売り上げを拡大していく。

 もはやコペルニクス的転回なしに、このうなぎ屋の生き残る術はない。安直な中国、インドネシア批判はそういった危険性をはらんでいるのである。

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