メード・イン・ジャパン復活に影? トヨタ出資の空飛ぶクルマ「Joby Aviation」の型式証明申請に見る、米国企業の脅威
サービスの提供は米国市場から

国際的な型式証明の基準として、連邦航空局(FAA)や欧州航空安全庁(EASA)が定めているものが広く通用しており、世界的にはどちらかの基準に準拠したものが使用されている。
つまり、各国はFAA・EASAの両方、またはいずれかと協定を結ぶことで、どちらかの基準に準拠した機体を各国で承認し運用している。さまざまな旅客機の開発に関わってきたFAAやEASAのほうが、多くのノウハウが蓄積されているため、どうしても優位となるからだ。
今回のジョビー・アビエーションの空飛ぶクルマは、日本の航空局への申請と同時に、FAAの型式証明の取得も進められている最中だ。日本の航空局とFAAは、情報交換や協力を通じて連携を強化するとして、ジョビー・アビエーションの型式証明申請日に相互協力の声明への署名も行った。
同社によると、FAAの審査と同時に日本の航空局でも審査を進めるケースは今回が初。サービスの提供は米国市場から開始する予定だが、今回の日米の航空局における新たな声明により日本における同機の導入を加速するという。
日本産との性能の違いは

日本企業では、ジョビー・アビエーションの申請の前年となる2021年10月、SkyDrive(スカイドライブ、愛知県豊田市)の空飛ぶクルマの型式証明申請が受理され、審査が開始されている。スカイドライブとジョビー・アビエーションの空飛ぶクルマの仕様は、以下の通りだ。
●ジョビー・アビエーション
・最大航行距離:約240km超
・最高速度:約320km/h
・定員:5人(パイロットひとり、乗客4人)
●スカイドライブ
・最大航続距離:約10km
・最高速度:100km/h
・定員:ふたり(パイロットひとり、乗客ひとり)
数字だけを見ると、ジョビー・アビエーションに軍配が上がるが、スカイドライブは小回りがきく運用形態で勝負する方針だ。
また、ジョビー・アビエーションは、2024年の米国での商業運転スタートに向け、航空機の認証取得、製造オペレーションの拡大など準備を進めていくとしている。一方、認証ロードマップによると、スカイドライブは2025年に型式証明を取得する予定で開発を進めている。
航空局への申請は1年遅かったジョビー・アビエーションだが、スカイドライブの機体で進められている型式証明の審査過程をいつ追い抜いてもおかしくない状況だ。
かつて日本製品は、「高品質の割に安い」と定評があった。しかし、シンプルかつそこそこのクオリティーでも良いとされる昨今の風潮を無視して、実直な開発精神を貫いた結果、今や「多機能すぎる上に高い」と評されるようになっている。
果たして、空飛ぶクルマも同じ轍(てつ)を踏み、マーケットを支配されてしまうのか。クルマやバイクの分野で日本企業が上位を走り続けるように、空飛ぶクルマでも外国企業に後れをとることなく存在感を放つことを筆者は期待している。