メード・イン・ジャパン復活に影? トヨタ出資の空飛ぶクルマ「Joby Aviation」の型式証明申請に見る、米国企業の脅威
忍び寄る米国企業
メード・イン・ジャパンは最強――。そんな共通意識が消えたのはいつだっただろうか。世界のマーケットを見渡せば、テレビや白物家電のシェアは中国や韓国などの企業が上位を占め、いつの間にか日本企業は鳴りを潜めた。
クルマの販売台数は、ドイツのフォルクスワーゲンと日本のトヨタが一騎打ちの様相だ。しかし、例えばバイクの世界シェアは、ホンダ、ヤマハに続いて、ここ数年でインド企業がじわじわと業績を伸ばしつつある。
忍び寄る外国企業。このような兆候は、最新モビリティ「空飛ぶクルマ」でも見られる。国土交通省が10月18日、米Joby Aviation(ジョビー・アビエーション、カリフォルニア州)が開発する空飛ぶクルマの型式証明申請を受理したと発表したのだ。
ジョビー・アビエーションはトヨタが出資していることで知られ、また、ANAホールディングスともパートナーシップを締結している。
型式証明とは何か
型式証明とは、航空法で定められた民間機を対象とする制度だ。開発段階で設計や製造過程の審査を行い、安全性・環境適合性の基準を満たしていることを証明するためのものだ。型式証明が取得できなければ実用機とすることはできず、このルールは空を飛行する空飛ぶクルマにも例外なく適用される。
開発された機体が量産されることになれば、同じ設計・製造方法で製造されることになることから、効率を考慮して同一の型式の2機目以降の機体に対しては、型式証明で行った審査は省略できる。このため、型式証明を取得することは機体運航へ向けた重要な第1歩であると同時に、最初の難関でもある。
審査は「設計段階の検査」、「製造過程の検査」、意図した製造方法で耐空性を満足する機体ができあがるか確認する「現状検査」の三つに分かれる。約400項目もの細かい要件が設定されており、ひとつでも満たさない場合は認証されない。
一時期話題となった三菱重工業の国産ジェットMRJ(Mitsubishi Regional Jet)が開発凍結に追い込まれたのも、この型式証明取得が難航したからだ。航空当局による詳細な審査が、開発と並行して行われるため、型式証明審査が順調に進むかどうかが、機体開発の鍵を握るともいえる。