日本の自動車輸出を襲う「最悪のシナリオ」 台頭する米中欧の保護主義、BEV戦国時代の勝者はいったい誰になるのか
世界各国でBEVの販売競争が加速している。この戦国時代に日本勢は立ち向かえるのか。2021年における乗用車登録台数から考える。
仏財務大臣も保護主義を主張
このような、保護主義以外の何者でもないインフレ削減法に対して、EUや韓国、および日本から批判が続出している。また、米国国内においても、過度な保護主義政策は、電気自動車を普及させるという環境目標の達成を困難にさせるだけでなく、自由競争を阻害しかえって労働者と消費者に被害を与えるだけだとの意見もある。
一方、フランスのブリュノ・ル・メール経済・財務大臣は、
「EU域内で製造された自動車を支援すべき」
「私たちは、EU域内の産業をはじめ、雇用と技術を守るために、米国と対等のルールにしなければならない」
と、EUも同じ保護主義的な施策で臨むべきだと主張している。
フランスと米国は、エアバスVSボーイング、デジタルサービス税にまつわる対立など、もともと貿易面で衝突を繰り返してきており、過去の経緯を踏まえるとル・メール経済・財務大臣の発言ももっともである。
しかしながら、EUが米国と対等のルールを導入するかどうかについては、その筋道が全く見えてこない。というのは、ヨーロッパの自動車メーカーと中国の関係が深いからだ。
ドイツのテレビ局ARDの報道によると、ヨーロッパの自動車メーカーが中国で生産し、ヨーロッパに輸入したBEVの台数は、2021年の約3万5000台に対し、2022年は約6万6000台とほぼ倍増する。さらに、3年後には約80万台が中国から輸入され、そのうち、ヨーロッパの自動車メーカーのエンブレムを付けているBEVは約33万台になるとの推計もある。
果たして、このヨーロッパの自動車メーカーと中国の関係を無視してまで、EUは米国のような施策を実施できるのだろうか。