「もくろみが外れた」 トヨタが見直しを迫られるBEV戦略、想像以上の普及スピードにたじろぐ現実
電気自動車共通のe-TNGAとは

もうひとつ、ロイターの報道にあった「基本設計のプラットホーム(車台)」の見直しとはどのようなことであろうか。
プラットホームは、自動車の骨格であり、以前は「単一車種・単一プラットホーム」が当たりまえだった。現在は、プラットホームやエンジン搭載方式、駆動方式、サスペンションの形式などを共用化して、ボディーを載せ替えてさまざまな車を製造している。
トヨタは2015年の4台目プリウスを皮切りに、Toyota New Global Architecture(TNGA)によりセグメント別のプラットホームの共用化だけでなく、エンジンなどのパワートレインユニットを一体的に開発して商品力を高めてきた。2022年3月現在で、TNGAによりトータル41モデルが投入されている。
そして、BEV用に新たに開発されたのがe-TNGAだ。TNGAで使用しているプラットホームが内燃機関を前提としているのに対し、e-TNGAは、駆動モーターやモジュール、バッテリーの配置など、基本設計が根本的に異なる。現在販売されているbZ4Xを始めとしたbZシリーズは、BEV専用のプラットホームをベースに作られている。
ロイターの報道では、このe-TNGAにより2030年までに年間350万台のBEVを販売すれば採算が合うと試算していたそうだ。しかしながら、予想をはるかに上回る急激なBEV市場の成長により、1台あたりの単価が低下し採算が合わなくなる可能性が出てきたのだ。
そこで見直しを始めたのは理解できるが、プラットホームの開発には数年かかるといわれている。完成した数年後には、BEV市場を取り巻く状況は今よりさらに変化しているだろう。完成した時点でその構想は既に陳腐化している恐れも十分考えられる。あくまでも理想論であるが、戦略を見直して後追いするよりも、能動的に未来を切り開いていく姿勢が必要ではないだろうか。