日立物流の買収開始も 日立傘下の「離脱リスク」は思ったより小さいワケ
成長分野の事業を多く抱える事業ポートフォリオ
話を戻して、日立物流の今後について考えてみよう。
冒頭で述べたとおり、日立物流は物流を包括受託する3PLとして有名である。3PLというと、「小売業の倉庫と配送を一括で請け負う」といったケースが代表的だが、同社の事業領域はそのようなイメージとはかなり異なる。
まず、売り上げで見ると海外比率が4割程度に上り(集計方法によって若干差が出るが)、運送業界内では例外的と言っても良いほどにグローバル化対応が進んでいる。
また扱う貨物の種類として、
・自動車関連
・ケミカル/危険物関連
・ヘルスケア関連
など、比較的高付加価値で、かつ成長性の高い領域で地歩を築いている。
成長率の高い3PL企業というと、中には「採算度外視」で受注確保に走っている企業も見受けられるが、同社の場合はそのような企業とは性格がかなり異なる。高付加価値領域での採算性を確保しながら規模拡大を両立してきたことが、今日の成長につながっているのである。
さらなるグローバル化による規模拡大が必須
このように隙がないように見える日立物流だが、個人的に同社の課題をひとつ挙げるとするなら、
「国内の物流マーケットの狭さ」
ではないだろうか。
陸運業に限ると国内の市場規模は15兆円程度にとどまり、しかも数十年間にわたって頭打ちでありまったく成長していない。同社は「2030年度に売り上げ収益1.5兆円」という、直近の売り上げの2倍に上る大幅な成長目標を掲げているが、これを実現するには、さらなるグローバル化を実現することが必須条件となるだろう。
グローバル物流業務は、
・日系企業の輸出や海外現地法人の物流
・外資系企業の物流
に分かれる。これまで日系物流業は、主に前者の日系荷主をターゲットに海外展開をして来たのが実態だが、明らかに限界が近づきつつある。
同社が目標に掲げる1.5兆円という売り上げ規模は、DHL(ドイツ)やFedEx(アメリカ)といったグローバル物流大手との競争も視野に入る規模であり、その意味で、日本という狭いマーケットから羽ばたくことが必要である。そのためには、「日本企業の良さ」を残すことは当然ながら、物流業務を「グローバル標準」へと進化させることが必要だろう。
そのような物流のグローバル化は各社とも苦戦して来たのだが、今回KKR傘下となったことを契機に、ロジスティードが本邦初のグローバル物流ブランドに飛躍することも期待できるのではないか。同社の今後にぜひ注目していきたい。