日立物流の買収開始も 日立傘下の「離脱リスク」は思ったより小さいワケ
機能子会社・事業子会社の違いとは
このように、日立物流の親会社との関係性が事業リスクにつながらないのは、同社の「経営上の位置づけ」が関係している。少し専門的になって恐縮だが、この点を説明しておきたい。
物流子会社は、大きく分けると
・機能子会社
・事業子会社
の2種類に分かれる。
機能子会社とは「親会社の物流機能を担う子会社」という意味であり、端的に言えば「親会社の仕事に専念する子会社」である。日本国内の物流子会社の大半は機能子会社に当てはまる。
一方の事業子会社とは、「物流事業で利益を上げ、利益面で親会社に貢献する子会社」である。事業子会社は収益性がポイントとなるため、親会社に限らず手広く物流業務を受託するのが基本だ。言うまでもないが、日立物流は事業子会社に分類される。
このうち、どちらが経営的に望ましいかは「ケース・バイ・ケース」と言わざるを得ないが、これまでの経緯を見る限りにおいては、事業子会社の道を選んだ電機系子会社に軍配が上がっている。
その理由はいくつか考えられるものの、根本にあるのは「A社の製品だけを運ぶ」という必然性が見いだしにくいことである。電機の中でも重電や事務機器、娯楽機器のように特殊な製品ではやや事情が異なるが、家電のように汎用(はんよう)性の高い商品の場合、メーカーの垣根を越えて一緒に運んだほうが効率的なのだ。
親会社の「物流軽視」も問題
日立物流の話から離れるが、機能子会社であれ事業子会社であれ、「親会社に足を引っ張られる」ようなケースも少なくない。
電機に限らないが、多くのメーカーは「物流は事業戦略のコア領域ではない」というスタンスである。言い換えれば、社内での物流の優先順位が非常に低い。
具体的には、社内の投資案件を検討する際、製品開発や生産技術などが優先され、物流は「後回し」になる傾向が強い。ところが物流は倉庫などのアセット(資産)無しでは成り立たない装置産業であるため、投資の制約は、成長への制約に直結する。
この傾向はアマゾンなど外資と比較すれば明確だが、物流子会社をうまくマネジメントできないことの背景には、日本企業の「物流軽視」という根深い問題がある。