日立物流の買収開始も 日立傘下の「離脱リスク」は思ったより小さいワケ
TOB開始と社名変更
日立物流(東京都中央区)が10月27日、米投資ファンドKKRによる株式公開買い付け(TOB)の開始を発表した。
同社プレスリリースや関連報道によると、現在約4割の株式を保有する日立製作所は日立物流が実施する自社株買いに応募し、保有株を売却。その後改めて議決権の10%分を買い戻すものの、KKR傘下で今後の成長を期する見通しである。またこれに伴い、社名を「ロジスティード」に変更することも発表された(実施は2023年4月1日から)。
このTOBは大きく報道されたものの、日立製作所傘下からの「離脱」は規定路線であり、TOB開始も当初の予定通り(手続き面でやや開始が遅れたが)であるため、業界内では意外感はない。
とはいえ、陸運業界の急成長株であり、3PL(スリーピーエル。荷主の物流業務を包括的に請け負う業態)分野トップである同社のビジネスの今後については、期待や不安、あるいは脅威に感じる向きもあるだろう。そこで本稿では、TOB成立以降の日立物流の今後について改めて考えてみたい。
親会社との関係はもともと希薄
まず気になるのは、日立製作所傘下からの「離脱」が同社の業績にどの程度マイナスに寄与するか――である。この点について、筆者(久保田精一、物流コンサルタント)は
「リスクは非常に小さい」
と予想する。
10年程度前までさかのぼると、パナソニックやNEC、リコーなど、電機大手の多くが物流子会社を保有していた(すでに売却済みの会社が多い)。実はこのような電機系物流子会社には親会社への依存度が高い企業が多かった。そんななか、日立物流は例外的で、当初から親会社への依存度が低いことが知られていた。
これは現在も同様であり、同社開示資料によると、日立製作所本体からの物流受託額は直近では130億円程度にとどまっており、連結売り上げの数%程度しかない。グループ会社を含めても、その割合が小さいことは明らかである。このように外販の比率が高いことから、仕事を失うリスクは大きくない。
一方で、日立製作所の戦略分野である「モビリティ」「社会インフラ」といった物流領域は、日立物流の得意領域と相当程度重なることから、むしろ逆に両者の関係が強化される可能性もある。