JALが大嫌いだった稲盛和夫 窮地を救った事業再生で「人をだますな」と言い続けたワケ

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京セラの創業者・稲盛和夫はJAL再生にいかに取り組んだのか。そして、最も大事にした経営哲学とは。

「アメーバ経営」とは何か

「全員参加経営」を実現するまでのプロセス(画像:京セラコミュニケーションシステム)
「全員参加経営」を実現するまでのプロセス(画像:京セラコミュニケーションシステム)

 ここではまずアメーバ経営から説明したい。

 アメーバ経営とは、組織を細分化して収支の責任を明確化した上で、時間あたりの付加価値を見える化し、その向上を目指すというものだ。もともとは製造業の現場で生まれた方法だが、森田はこのアメーバ経営の手法を用いて病院経営の立て直しも行っている。

 その森田がJALに乗り込んだときの第一印象は「社内に数字に興味がある人がいない」(151ページ)というものだったという。JALでは中枢の経営企画がつくった予算を消化するという意識が強く、その結果、赤字になったとしても誰も責任を感じていない状態だったのだ。

 ただし、アメーバ経営をJALに移植することには難しさもあった。JALの各事業部において「収入」があるのは航空チケットを売る旅客販売統括本部だけで、あとはパイロットが所属する運行本部にしろ、整備本部にしろ、基本的には収入がないからだ。

 そこで森田は、成田ーニューヨーク、羽田ー札幌といった1便ごとの収支が翌日にはわかる体制を目指し、分析を始めた。例えば、1便ごとの

・パイロット費用
・客室乗務員費用
・空港費用

などを割り出し、それを路線部門からは「費用」、パイロット部門からは「収入」となるように割り振っていくのだ。

 森田と稲盛は、半年近くかけてJALの役員や幹部と話し合って最適な割り振り方を考え、さらに導入後にも手直しを続けてアメーバ経営を定着させた。

 このアメーバ経営の効果について、当時JALの社長だった大西賢はスポーツに例えて、試合の2か月後に「君たちは実は勝ってたんだよ」と言われても、点差も残り時間もわからないのに「頑張れ、頑張れ」と言われてもちっとも燃えないが、すぐに勝敗の結果が見えればみんなが燃える、という話をしている。

 このすぐに数字が出てくるスタイルによって、コストの削減という後向きになりがちな努力を、前向きなものに変えることができたのだ。

 2012年の3月期の決算でJALの営業利益は2049億円という過去最高を記録したが、このうち数百億円はアメーバ経営による細かなコスト削減効果の集積だったという。また、このアメーバ経営によって社員全員に経営者感覚が身についたことで、2013年1月に起こったボーイング787型機の運行停止というアクシデントも、社員が当事者としてその穴埋めに取り組み、損失を抑えることができた。

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